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横浜青葉店
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写真分析~コクチョウってなんだ?~

投稿日:2018/5/24

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Yokohama aoba
Photo:gomei
Codi:Misaki Nakagawa
 
初めて彼女と会った時、彼女は踊っていました。
そして笑いながら私にこう言いました。
「ママはね、○○フォトコンテストで最優秀賞取ったんだよ!」
「が、がんばります!」
「はい、頑張ってください!」
いいから、いいからと言いながら恥ずかしそうにしていたママの表情が印象的でした。
そして大人びた会話とは裏腹に、幾度もくるくると回り踊っている彼女の髪の毛を撮影が始まるまでに5回も梳かしたのを良く覚えています。
何故彼女は踊りまくっているのか、謎が深まりますが、単純に習い事のバレエが大好きということを伺いました。
なんと週5日も通っているようで、とにかく好きで将来の夢はバレエダンサーという彼女の目に本気がうかがえましたが、何もここで踊らなくてもいいではないかと思ってしまった大人の私ですが、童心はどこへ行ってしまったのだろうかという自分自身への寂しさを感じました。
 
そんなにぎやかなカウンセリングを行っていましたので、撮影もにぎやかに行われることは必然の様でした。
撮影スタート直後に彼女の変顔の嵐。
おいおい、頑張ってというのはこの変顔との戦いか?と言わんばかりに、やりまくってきます。私も応戦して変顔を行いますが、「気持ち悪い~」「最悪」というありがたきコメントを頂きながら、にぎやかな撮影が戦と化していきます。
親御さん達もまったく~と言いながら楽しそうに撮影を見守ってくれていました。
持ち前のキャラクターがカウンセリング時から爆発をしていましたので、その雰囲気で全シーンいくかなと思いながら、3シーン目の彼女のドレスソロシーンを迎える事になりました。
私の撮影の基本的な信条は、子供は子供らしくなので、にぎやかな撮影は持って来いです。
さあ、撮影するかと彼女を見てみると、コーディネーターの中川と彼女が鏡の前で談笑している姿を見つけました。
普段着る事の少ないであろうドレス姿を鏡で見て、ネックレスをつけている姿が印象的で、内からにじみ出てくるような喜びが、口元を緩ます姿が、勿論ですが年相応の姿に見えます。
「なんだ~、そんな一面もあるじゃない」と声をかけると、すぐに変顔なので、あれ?間違えたか?そんな感覚を抱いたのを覚えています。
 
とはいっても、彼女の嬉しさは本当だろうと、ふわっとした光の設定で、女の子らしい写真を撮っていこうとしました。
この写真は彼女にうつ伏せをしてもらい、遠くからライトボックスをつけて弱い半逆光を使用してハイキーの写真を撮る予定でした。
彼女はとても目力が強い印象でしたので、ハイキーの露出設定と、真剣なまなざしが良いギャップになるかなと思い、クールな感じにしてみようと声をかけてカメラを構えました。
すると後ろの方からママが、「コクチョウ!コクチョウ!!」と声をかけてきてくれました。
私は全く分かりませんでした。
なんだ、コクチョウって?
するの彼女の表情がググッと変わり、一気に真剣なまなざしになります。
中川もコクチョウ!と言いながら同調していましたので、その瞬間理解できていないのが私だけでしたので、カメラを置いてママに聞いてみます。
「コクチョウってなんですか?」
「バレエの演目の…」
解説を頂きようやくわかりました、コクチョウではなく黒鳥でした。
バレエは殆ど見たことのない私でも知っている白鳥の湖の登場キャラクターです。
以前ナタリーポートマン主演のブラックスワンという映画がありましたので、ぎりぎり私でも何となくイメージを掴むことができました。
そして彼女はその黒鳥になり切っているようでした。
なーんだ女優じゃないかと感心しながら、露出を極端に変更します。
合っているのかは全く分かりませんが、彼女の仕草から見える黒鳥は、暗くダークな雰囲気。その分己の信念が強く、近寄りがたい存在。こんな具合にイメージが作られて行きます。バレエ好きの方々へ、あくまで私が適当に思い描いたものなので怒らないでくださいね。
 
ダークで暗い雰囲気は、カメラでの露出設定により行いました。
ハイキーにしてみようという考えを全部捨てて、弱い光が当たっている位置だけを確りと確認します。
頬のラインを照らす光に注意をして、あとは暗い雰囲気に設定をする事で、元々そこまで陰影差が無い設定でしたので、緩やかな階調を生むことができるなという考えがありました。そのため露出でのイメージの具現化はそう難しいものではないので、ある程度簡単に決まります。
次に信念が強く近づきがたいイメージはどのように捉えればよいのか考えます。彼女が見せてくれた仕草もありますし、目は口ほどに物を言う戦法で、この写真の主役は目に決定しました。
シンプルに頬に手をついて撮ってみても、何だかつまらないし、意志が全然伝わってこない写真になってしまいました。
私も這いつくばりながら肉眼でよく彼女の表情を見てみると、奥の目に少しだけ輝きが見えました。きらっとするキャッチライトが。
そうか目も2つあるから一つの力が弱まってみえてしまうな今回は…と感じながら帽子の端を持って顔に近づけてもらいます。
もっと、もっと、と言いながら右目が隠れて左目の光だけが目立つ瞬間を撮りました。
なるべく力強くするために、画角は限界まで寄りました。
少しうつむき気味の視線でしたので、縦写真にして目線側に空間を少しだけ開ける事で、より表情に第三者の目線が行くように設定を行います。
オッケー!というとまた変顔の嵐。
でも何だかそんな一瞬が撮れたことに、嬉しさを覚えました。
 
今回は自発的なイメージから作られる写真ではなく、彼女が作るイメージに対して設定を行って行った受動的なスタンスから生まれた写真です。
勿論主体的に撮影を行って行くことに越したことはないですが、受動的から始まるものもあるのは事実です。
はたまたどちらから始まったのかなんて議論は結論つけられない話が多いのも現実です。
重要なのは主体的に始めようが、受動的に始めようが、作られたイメージを基に技術を適切に使い、納得いく内容の写真を生むことではないかと考えます。
現に私は黒鳥をほとんど知りませんが、イメージに沿う写真を撮れたと思います。
だからいつでも名探偵の様に、些細な情報も見逃さない様にする姿勢がカメラマンには大切な要素の一部なのだと考えます。
 
 
 

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