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横浜青葉店
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夢で逢えたら ~Reiri Kuroki

投稿日:2017/7/16

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Photo by Kazuma Gomei
Coordi&Write by Reiri Kuroki

@Yokohama Aoba


良い写真、と言われるその理由のひとつに、『撮影者の意図が明確に反映されていること』が挙げられると思う。
この写真は、確かに撮影者の意図があり、尚且つ挑戦的なものである。

「アッパーライトで撮ります」と宣言した五明さんを、「おおぅ、マジか」という思いで見ていた時に、この絵は私には浮かんでいなかった。
それでも何となく、どんな写真になるのか期待していたのは、五明和真というカメラマンが、青葉店で果敢な挑戦を繰り返していることを知っていたからだ。

自分の狭量な判断基準に任せれば、アッパーライトは極力避ける。
誰でも一度は、顎の下に懐中電灯を当ててみたことがあるだろう。いわゆる「お化けライト」であり、日常的に目にする光源とはかなり異なる為、違和感を覚えることが多い。
効果的に使うには、被写体の顔立ちを相当精査しなければならない。そこまでして、敢えてアッパーライトを使う理由が、私にはない。
しかしこの時、五明さんは数ある光源の中から敢えてアッパーライトを使った。日没にはまだ早く、自然光で充分撮影可能な時間帯だったにも関わらず、だ。
窓から入る自然光の存在感を消す為に、敢えてISOを下げ、アッパーライトに光源を集中させている。1灯という潔さはベストだ。暗闇のような世界の中で、印象的に被写体の存在感を浮かび上がらせ、彼女のその目に全てを託している。
手の位置、顎を乗せる角度を細かく指示していたのは、その微調整こそがアッパーライトの効果を良くも悪くもするからに他ならない。光源が近く補助光がない分、僅かな角度の違いで影の付き方が変わり、その僅差が印象を変える。「お化けライト」になるか、「効果的な光」になるか。結果的に、この写真は「効果的」にまで辿り着いていると思う。
床の隙間から漏れる光は、インテリアの観点から見れば欠陥部分かも知れない。しかし、130mmの望遠効果でその光は丸くボケて不思議な煌めきになった。構図的に、上部に被写体の重心が落ち着いている場合、下部に何かしらのアクセントが必要だ。ここがただの黒であったのなら、余白の意味が少々薄い。

被写体である彼女は不思議な魅力と存在感を持った女の子で、出会った瞬間から五明さんや私との会話を楽しんでくれた。
卒園と入学の記念で来てくれた彼女は、園服と入学式用のフォーマルでの写真を2シーン分撮了しており、この時期ならではの無邪気な笑顔や記念的な意味合いの写真はある程度収めていた。
ドレス姿での3シーン目で、カメラマンの写欲はよりかき立てられたのだと思う。
ライフスタジオは、写真館だ。お客様のニーズがあり、お客様に求められる写真がある程度、ある。商業写真、記念写真といったカテゴライズをされるような写真がそれである。
しかし、ライフスタジオの写真はそれだけではない。
撮影者が意図を持って、被写体の魅力を探し、表現する。それは、お客様のニーズを超えて、新しい自分との出会いになるような写真になる筈だ。
この時、カメラマンである五明さんと被写体である彼女の間に、確実に関係性が作られていくのを側で感じていた。
まるで即興劇のように、五明さんから彼女に対してのオファーと彼女からのアクセプトが繰り返され、互いに挑み、受けて立つような、そんな応酬が幾度も続いた。
その繰り返しの中で、五明さんはより彼女に集中していき、彼女も五明さんに集中していったのだと思う。6歳の女の子に対し、五明さんは真剣だったし、彼女も真剣だった。おふざけもシャボン玉も無く、五明さんと彼女の会話やシャッター音で撮影が進む。

前述の通り、ライフスタジオは写真館であり、お客様のニーズがある。
ライフスタジオのHPを見たお客様からは、「自然な写真」を望む声が多く、「ふんわりとした、明るく柔らかい写真」と表現されることもままある。いわゆる、被写界深度が浅く露出はややオーバー目で、明るい写真。
それは、Babyやkidsの無邪気な笑顔や、家族の温かな空気感の表現において、汎用的であると言える。
その点において、この写真は完全にその逆を行っていると言っても過言ではない。
このようなアンダーな写真を、6歳の子どもの卒園、入学の記念で撮影に訪れたご家族が、想像していただろうか。
撮影中に、「笑顔の写真や可愛い写真は撮れているので、ちょっとシックに撮りますね」と説明していた五明さん。お客様の望む写真、というものを分かっていて、それは確実に抑えた上で、敢えてその想像の及ばないような、ちょっとハードボイルドな、別ジャンルの写真で彼女を表現することを試みた。
それはきっと、ご家族が、被写体自身が、初めて見るような彼女の姿であったと思う。
この表現に至るまでには、カメラマンと被写体との、撮影の過程で作られていった信頼関係が大きく影響する。
彼女に対して、汎用的な表現手法だけで表すにはあまりに不足だと感じた。投げかけに対して応じる、受けて立つ姿勢だった彼女の魅力を、存在感を、撮影の過程で子ども離れしていく一種の凄みを、五明和真というカメラマンが自身の中のものを引っ張り出して組み合わせて表現することを試みた時、その結果物が、こうなった。
お客様の想像する「ライフスタジオっぽい写真」の逆を行くことは、挑戦である。そして、「ライフスタジオっぽい写真」ばかり同じように撮り続けることは、怠慢である。

五明さんは青葉店で、カメラマンとして、果敢に挑戦を続けている。
その姿勢が私に与える刺激は、とても大きい。


※タイトルは、彼女との再会を約束する五明さんのくっさい台詞から引用しました。
 

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