Photogenic


湘南店
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しあわせはあたたかい子犬

投稿日:2019/1/1

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photo : Hisho Morohoshi
coordi : Akimi Yoshikawa

 

◆◆◆◆◆

 

Happiness is a warm puppy.
Happiness is walking in the grass in your bare feet.
Happiness is an umbrella and new raincoat.
Happiness is 35¢ for the movie 15¢ for the popcorn and a nickel for a candy bar.
Happiness is finding someone you like the front door.

 

しあわせはあたたかい子犬
しあわせは芝生をはだしで歩く事
しあわせは新しいカサとレインコート
しあわせは35セントの映画と15セントのポップコーン、そして1セントの棒付きキャンディー
しあわせは扉を開けたら大好きな人がいた時

 

Charles M. Schulz "HAPPINESS IS A WARM PUPPY"

 

◆◆◆◆◆

 

子供たちのキラキラと遊んでいる姿は、私達大人が忘れてしまった本当のしあわせというものを思い出させてくれます。
私に写真を授けてくれた師匠が哲学者だった事もあり、人間の普遍的で恒久的な幸福と困難について随分沢山の分厚い本を読み学んで参りましたが、どれをとっても今一つ心に残るものが無い事こそまたある種の心残りであり、師事の後半に至ってはサルトルがレヴィ・ストロースに打ち負かされた理由なんかより、羊が大きくてなぜ美しいのかひたすらフェルミ推定する日々を送っていたものです。

 

今から50年以上前、ニューヨーク万博にてウォルト・ディズニーが初めて「イッツ・ア・スモールワールド」を完成させた際、その平和で楽しい世界を子供達だけで表現したように、本当のしあわせな世界というのは大人の書く難しい哲学書は不要で、その作り方は子供たちこそが知っているのかもしれません。 
子犬を抱いた時に芽生えるぬくもりと愛しさ。
芝生を裸足で歩く心地良さ。
新しいカサとレインコートがあれば雨の日だって楽しくなるし
ほんのちょっとのコインで実は沢山贅沢できるなら、それが金貨に見えてくる。
扉を開けて大好きな人がいたら…嬉しくて叫んじゃうし、跳びはねちゃいますよね。
私はこのおよそ10年間の写真家人生の中で、そんな子供達の純粋でキラキラとした世界に触れ、彼らに見えているしあわせに満ち溢れた世界をなんとか表現したいと努めてきました。
それこそがこれまでのphotogenicであり、諸星イズムです。

 

大好きな家族であり、友人でもあり、時にはライバルにもなれる関係。それが兄妹です。
彼らの作り出す空間は、親子のそれとも、また友達同士のそれとも異なる特別なものです。
しかし時が経つにつれてその関係の在り方が刻々と変わっていくのも兄弟の関係ならではですね。
今はお互い肩をくっつけあいながら一つの本を二人で読む二人ですが、やがて時と共に生活サイクルも変わり、別々に物事をしたり或いは同じ空間にいても背中を向けあってスマホを弄る日が来るのでしょうか。思春期には思わぬ行き違いからぶつかり合ったり、それぞれが思い描き歩む進路の為に距離が置かれる時期も来るかもしれません。
でも、この先一体どんな事があったとしても、今日この日この場所で仲良く過ごしたこの時間は本物であり、この先どうやっても巻き戻す事の出来ないこの時間こそが未来の二人にとって宝物になるように…。そう願って、私はこの写真をご家族に贈りました。
Lifestudioで撮影する写真とは、タイムカプセルみたいなものなんですね。

 

◆◆◆◆◆

 

写真の分析と考察について

◆境界線
風景写真家でもある自分は時として目の前の人物を如何に風景(或いは世界の一部)として美しく収めるかに集中しますが、飽くまで主役となるのは目の前の子供達でありそのエッジは残さなくてはなりません。
この写真における風景写真としての要素と人物写真としての要素の境界線が子供達を2次元的に囲む大きな窓であり、“flame in flame”と呼ばれるこの手法が二人の存在と楽しい空間をより確かなものにしています。
一方で画面を賑わせる小物を窓の中から外へかけて散りばめたり、窓の外にある緑を窓の中にも入れた事などによりその境界を曖昧にし、内外の両者を溶け込ませる事で全体的な調和に成功しました。
これらの要素が過不足なく画面内に配置された事で、まるでおもちゃ箱のような印象の一枚へと仕上がります。

 

◆光軸線
この写真の世界観を演出する構成要素として最も重要なものの一つが光です。
子供達を明るく照らす昼下がりの日差しが楽しい空間を演出し、境界外との間に生まれた露出差が二人の存在を際立たせています。
逆光条件で生まれた太陽光軸へのコサイン的アプローチによりフレーム全体にコーティングの淡いマゼンタが広がって画面全体を色付かせると共に、屋根への反射とフレアの大小の光輪が画面の対角線上に並ぶ事で絵に安定性と躍動感の両方が生まれました。
人物写真としては明るくしたいが、風景写真としては光を飛ばしたくない。こうした葛藤により生まれたのが、ハイキーな人物部分とローキーな風景部分という2つのパートを両立させたハイブリッドな今回の一枚です。

 

◆◆◆◆◆

 

日々の勉強や生活の疲れが溜まった時こそ、私は幼い娘に絵本を読み聞かせてあげることにしています。
絵本は分厚い哲学書よりも、人間の本来的で根源的な幸せを気付かせてくれる事が多く、私の心にかかった凡ゆる暗い雲を取り払い、再び晴れやかにしてくれるものです。
今回の「しあわせは…」から始まるシュルツのいくつかの言葉もその一つで、「スヌーピー」の作者である彼らしい優しくそれでいて本質を突いてくる言葉の数々が私達の身近な幸せについて気付かせてくれます。
最近では私の書斎は絵本で溢れるようになっていき、もはや私の物なのか娘の物なのかわからなくなってしまうほど。
娘がどれだけ大きくなっても私は絵本を読み聞かせあげたいですし、「本当に大事なこと」を見失わないようにしてほしい。
私はこのベッドサイドの時間が大好きなのです。

 

娘を寝かしつけた後、私はそのままテーブルに向かい、結局は分厚い法律書を傍らに会計学の勉強を再開します。
これはこの2年近くずっと続けている習慣であり、全ての履修まであと2年は掛かる見込みです。
よく周囲から少年のようだと言われることが多い私ですが、良い意味でも悪い意味でも夢想家なのでしょう。
まだまだ夢の為に、私は頑張らなくてはなりません。
写真も撮れちゃう会計士とか…面白いと思いませんか?

 

約2年という意外と短い期間ではありましたが、周りの方々には本当に感謝しかありません。
これまで撮影に入らせて頂いた全てのお客様。
そして共に切磋琢磨してきた湘南店の皆様。
共にLifestudioを創ってきた全店舗の皆様。
本当に、ありがとうございました。

 

入社する5年以上前からずっとこのphotogenicを楽しく拝見しておりましたが
縁あって投稿する側になれた事、受賞まで頂けた事を嬉しく思います。
2019年より諸星は新たなる道へと旅立ち、カメラからは一旦退く事になりますが、
写真家とは職業ではなく生き様。諸星イズムは永遠です。
そしてこれからも引き続き、大好きなこのphotogenicの場所を楽しみにしています!

 

またお会いしましょう!

 

LifestudioShonan 諸星飛翔
 

 

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美しさを表現し、思い出を記録する、楽しい遊びの空間

人生の写真館ライフスタジオという名前に込めた想い。
それは、出会う全ての人が生きている証を確認できる場所になること。
家族の絆とかけがえのない愛の形を実感できる場所として、
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