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『 本屋の記憶 』

投稿日:2024/6/30     更新日:2024/6/30

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photo : Masashi Kuroki|coordi : Pepe

No.24 Life studio Shonan

                              

 

まだ自分に物心一つ付いていない頃、よく親父と本屋に行った。

親父は根っからの読書家であるので、沢山の本が階段や廊下まで至る所に積んであった。

その数は千、二千ではなく、万を超えていただろう。

 

私が四歳ぐらいの頃だっただろうか。

またいつも通り親父と本屋に行った日曜日の午後。

狭く縦長の本屋。

そこはたくさんの人で溢れていた。

今から40年以上前の本屋はそれが当たり前で活気があった。

そんな中、ふと上を見上げると右にも左にも親父の顔は無く、知らずのうちにはぐれてしまっていた。

一気に不安になった私は親父の膝を探した。

特に小柄だった私の目線には人の膝しか入って来なかった。

そして見覚えのあるズボンを見付けその膝にしがみついた。

安心し、見上げた先にあったのは眼鏡をかけていないおじさんの顔。

すると間も無く、足早に近づいてくる足音。

改めて見上げると眼鏡をかけた親父の顔があった。

膝をかがめて私を見る親父は微笑んでいた。

 

家族との思い出や記憶。

その中で強く残っている記憶は意外と旅行とかよりも日常のなんて事のない記憶の方が多いような気がする。

そんな日常を写真として残せればなといつの日も思っている。

 

 

梅雨の合間、雨が止んだ午前中。

薄く張った雲の後ろに太陽がいた。

そんな太陽は雲を通してふんわりとした光を注いでくれていた。

スラリと長い足をかがめて顔を寄せる父、そして優しい手で包む母。

この光景を目の前にして私は本屋の記憶を思い出した。

これからもお二人で小さなその手を離すことなく優しく育ててあげてください。

 

 

 

実家に並んだ万を超える親父の本。

正直、その本を私は一冊も手に取ったことが無い。

でも、何度も行った本屋の記憶は今でもはっきりと覚えている。

 

 

Written by Masashi Kuroki   Shonan

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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美しさを表現し、思い出を記録する、楽しい遊びの空間

人生の写真館ライフスタジオという名前に込めた想い。
それは、出会う全ての人が生きている証を確認できる場所になること。
家族の絆とかけがえのない愛の形を実感できる場所として、
人を、人生を写しています。

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