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うつくしむ

投稿日:2022/10/8     更新日:2022/10/8

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涼しくなった秋の夜、お腹が痛くなって目覚めた深夜2時。
寝ようと思っても寝れなかったので最近思うことを色々と考えていました。

残したいもの 残していくべきもの
伝えたいもの 伝えなければならないもの
守るべきもの 諦めるもの
それでも必ず守っていかなければならないもの

日常のこと、仕事のこと、写真、表現、歴史、未来、ぐるぐると考える中、七五三についてまとめようとしていたからなのか、

ふと頭の中に「うつくしむ」という言葉が浮かびました。

流行り廃りに左右されない普遍的な美しさ、存在としての美しさ、日本文化の美しさや伝統の中にある想いをどう伝えられるのか。
美しいと感じられる心を大切にしていきたいという気持ちから「うつくしむ」という言葉が出てきたように思います。

うつくしむ
美しむかと思い、調べてみるとまさかのまさか。

美しいという漢字の表現ではなく
【うつくしむ=慈しむ・愛しむ】
かわいがる、いつくしむ、大切にする、愛する、ゆるす

深夜にドカン。ズドン。むしろストン。スッキリ。どの擬音語も当てはまってしまってお腹の痛みが一瞬で消えました。
かわいいって言葉だけだと軽すぎて、愛なんて言葉は重すぎて、それでもやっぱり愛しいとか尊いとか、直接言葉にしなくてもそんな気持ちにさせる力がこどもたちにはあって、日々感じてきたうまく言い表せない気持ち全てを包容するような「うつくしむ」という言葉に出会えた嬉しさったら。


美しい日本語、奥深い言葉。


起源は平安、清少納言の枕草子でも使われていると知りそのまま「うつくしきもの」という文章を読んでみました。(古文で出てきた春はあけぼのの章くらいしか覚えてなかったんですけど多分こちらも習ったはず。。。著作権ないので冒頭だけ抜粋します)

 

*
うつくしきもの
瓜にかきたるちごの顔
すずめの子の、ねず鳴きするに踊り来る
二つ三つばかりなるちごの、急ぎてはひくる道に、いと小さきちりのありけるを目ざとに見つけて、いとをかしげなる指にとらへて、大人などに見せたる
いとうつくし

*


↑二つ三つの下りが好きすぎて簡単に現代語訳すると、「2.3歳の子がわちゃわちゃ床を這いつくばりながらちっちゃいゴミをめざとく見つけて、小さな指でつまんで宝物かのように大人に見せてくるって……ちょっとなに、かわいすぎるんですけど!」という感じでしょうか。

ねぇちょっとそれゴミなのになんでそんな大事に握りしめてるの、かわいすぎる!!って現代のわたしでも思うからこそ、1000年前と一緒!清少納言とそのまま一緒!!!って、これまたうつくしむ気持ちが止まらない。

小さい頃の全ては一瞬のようで尊いものだからこそ、思いっきりかわいくて愛らしく思えてしまう。今しかないことがたくさんあるし、全部受け止めた上で厳しくも優しくあろう、今も1000年後も小さな姿を全力で大切に育める世の中でありますように!って壮大ですが、そんな気持ちになってしまいました。


この仕事を始めた頃はただ楽しくこどもたちの写真を撮るだけだと思っていたので、そもそも簡単に遊んでくれないし笑ってくれないし泣くし、、、想像してたんと違う…の繰り返し。
こども好きかと言われればそうでもなく、こどもたちと関わることも少なく、とにかくなんでこんなに泣くのか全然理解できなかった。
なんで嫌がるのか、なんで聞いてくれないのか、そもそも何をしたいのか、そして自分が何をしたらいいのかも分からなくて、楽しいとかかわいいなんて余裕などなく、どえらいところに来てしまった…この仕事向いてない…の連続でした。

ただその連続の中で分かったことは、今は今しかないということ。
年齢性別国籍って思ったよりもなんでもなくて、みんなそれぞれの姿や意志があるということ。

いつか泣かなくなるし、もしかしたら泣けなくなってるだけかもしれないし、だからこそ、泣いている理由もあれば強がってしまう理由もある。
想像すること、押し付けないこと。
どんな姿も受け入れて一緒に今を大切に過ごそう、そんな風に思えるようになったのは、次第にどんどんわたしの背に近づいたり抜いていく、こどもだと思っていた「人」たちの逞しく成長していく姿があったからこそでした。

感情むき出しだったり自由奔放だったりする姿はそりゃ大変ですが正直羨ましくもあり、毎日いろんな場面に遭遇してはわたしたちもどうしよう、、、って思いながらどうにかしよう!!!って相変わらずヒーヒーフーフー過ごしております。


0歳の頃からずっと見てきた成長、初めて会った日から全力の泣き顔を見て、1歳も2歳も泣いたりパパママから絶対に離れたくなかったりするたびに、おとなたち一致団結で、汗をかいて大笑いしながら撮影をしてきました。
2歳の撮影をしながら「来年はもう七五三か~」と、本番1年前からわたしたちの七五三作戦は始まっており、好きなこと、きらいなこと、楽しそうにしていたこと、どんなふうに遊ぶのが好きなのか、全部覚えていられるような写真をいつも残しながらメモもしているので、次はどうしようかイメージをしています。


お母さんも着た素敵な帯のお着物、99.9%嫌がるだろうな。。。と覚悟を決めてからの再会、笑ってたかと思った3秒後に泣いちゃって、泣いたかと思ってたら笑って、頑張れ頑張れって心の中で全力で伝え見守ったはじまりの時間。
はじめての着物、優しい眼差し、キラキラ光る涙の粒。この3分後には女優のように着物姿の撮影ができました。
不安な気持ちも遊びたい気持ちも楽しい気持ちも全部閉じ込めて、いつかまた大人になったらこの泣き顔を見て笑っていてほしい。
なんでこの時みんなマスクだったんだろうなんて、思い出す日には笑い話になっていてほしい。


【うつくしむ=慈しむ・愛しむ】
かわいがる、いつくしむ、大切にする、愛する、ゆるす

ただただうつくしむ日でありたい。
その景色が目の前にある嬉しさ。

 


想像では20代で結婚して子供を3.4人産む未来予想図だったのですが、まぁ人生色々な訳で、我が子はいませんが何千人ものこどもたちとご家族の姿を見守らせていただきました。

だからこそ色々思います。色々感じます。
人生色々、本当に。
ひとりひとり違う人生。

人が人を育てるって本当にすごい。
人間として生きるって大変。
だからこそ、頑張りすぎるくらい頑張らないと生きていけないような世の中だとうつくしむ気持ちを持てる余裕がなくなってしまうのかもしれません。
不平不満はいつも少なからず必ずつきまとうし、世の中の矛盾や不条理さをどうにもできない歯痒さもあるけど、それでもやっぱり楽しく過ごす姿をこどもたちに見せたいし、問題には目を逸らさずにできるだけのことはやって引き継ぎたい、最近はそんなことばかり考えています。

1000年先の未来のためにできることなんてほんの少しだろうけど、繋げられることはきっとある。

大切なものを大切に、優しい世界でありますように。

 

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