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世界を感じる

投稿日:2018/7/30

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彼はとってもかわいかった。

存在すべてがかわいくて、愛おしい。

むちむちな体の境目は、歩き始めたらもう無くなってしまうのを私たちは知っている。

昨日切りそろえられたのだろうか、

真っ直ぐな前髪が彼のチャームポイントの眉毛と睫毛を魅力的に見せる。

そんな彼のふと見せた仕草、

それは段差の下に手を伸ばし

何かを触ろうとする姿だった。

興味しんしんに何回も続ける。

 

この何気ない、意味のないような仕草も彼にとっては必要不可欠なのだという。

赤ちゃんは脳の発達とともに様々な動きができるようになる。そして同時にあらゆる動作を通して様々なものを認知できるように成長していく。

そして赤ちゃんの行動は知性の働きの証だと聞いたことがある。論理的に理解し、自分と自分の周りの世界を秩序立てる羅針盤を得る時期が幼少期だという。

 

彼のこの行動にも、何か意味があるのだ。

そう思っていた私はこの瞬間をどうにか残そうと思った。「感じる写真」として残したいと。


 

「感じる写真」とは?

 

お決まりのインテリアで、理想的なポーズで、そして表情は(可能な限り理想的な)笑顔で残された写真は必要だと思う。

だけど、それだけで構成された75カットには何が足りないのだろうか?


 

今回の店舗での取り組みは「感じる写真」

私自身の写真を振り返ってみて、やっぱり説明的な「読む写真」が多いのを感じていた。

情緒に訴えるようなそんな写真。

読ませる意図ではなく、感じさせようとする意図がある写真。

 

その一枚を残すには、まだ自分自身固定観念にとらわれているような感覚があった。

 

感じさせるには、

はっきり移すのではなく、ぼかしを使って曖昧に表現すること。

余白を使って抜け感をだすこと。

今までに見たことのないような表現であること。

が必要だと整理してみる。

 

ふと視点を変えて世界を見るとき、

はっとする瞬間がある。

 

私は彼の伸ばした手の先には海でも広がっているようだ、、と思う。

目の前に広がる彼の世界。

彼はこの世に生まれて、これから何かを見つけるために彼の生を生きていくのだ。 

そんな予感をさせられる一枚になっているだろうか。

 

大人になればなるほど、

はっきりとした理解できるものを好むような気がする。それは、自分自身に利益があるのかという判断基準が作り上げられていて、それに悪く言えばそれに支配されているからだと思う。

だからこそ、感じるということを意図的にするのは、私にとって必要だった。今回の取り組みで、理想的でよいと言われるような写真を求めてすぎてきた自分自身の凝り固まっていた観点を変え、もっと自由に感じた世界を表現するきっかけにしたい。

 

彼のように手を伸ばし、

何かを感じようとすること。

そこから感じる写真は始まると思った。

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それは、出会う全ての人が生きている証を確認できる場所になること。
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