この写真を撮影したのは、私の娘の3歳の七五三の時です。
普段はなかなか口紅をつけさせてくれない彼女が、その日は「ママがやって！」と要求してきました。その一言に、私は驚きと共に嬉しさを感じました。

ママの手で口紅をつけられるという行為が、彼女にとってどれほどの安心感をもたらしているのかが伝わってきました。ママは特別な存在なんです。
これまで嫌がっていたことも、ママがやってくれるのなら百人力。
本当は何ともない魔法だけれども、気の持ちよう。
ママがやってくれると、不思議と力と勇気が出るのかな。

露出をオーバーにし、モノクロ設定を選びました。色の情報を排除することで、娘とママの関係性やその瞬間の感情をより鮮明に伝えたかったのです。脆くも力強い、虚の魔法。モノクロの世界は、時に私たちの感情や記憶をより深く刻み込む力があると感じます。
レンズは70-200mm、なるべくお子様の表情が大きく映るように、でも２人の距離感を邪魔しないように。

私がこの写真を通して伝えたいのは、初めての経験や不安な状況でも、ママがそばにいれば、その不安が和らぐということ。この写真は、娘の純粋な信頼と、私の目線での「ママの存在の大きさ」を切り取った1枚となりました。