Photogenic
青山店
day by days,
投稿日:2021/12/20     更新日:2021/12/20
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Photo&Write by Reiri
Coordi by Mayu Nishi
@AOYAMA
毎日は、何気なく過ぎていきます。
その、何気なく過ぎていく時間こそが本当はとても特別なんだけど、特別なものがずーーーーっと続いているからついつい特別だってことを忘れてしまったりする。
写真、というのは、それを思い出させてくれるものだと思っています。何気なくそこに在るもの、その瞬間のその時を、改めて見つめ直すきっかけ。
それが、カメラを持って写真を撮る、ということのひとつの側面で、撮影者の醍醐味だと思っています。
青山店の冬の午後の光は、とても綺麗です。
やや低い角度で太陽が動いていくこの季節は、午後になると西に傾き始めた陽の光がスタジオの内部まで差し込んできます。青山店で初めて撮影してからもうすぐ1年になりますが、季節が1周しつつある今日この頃は、最初の頃に見ていた光と似た光を見るようになりました。
朝から陽が落ちるまで、私たちはここで撮影をして、明日もまた同じように撮影をして、日々は流れていきます。見慣れた空間に差し込む光は、天候により、時刻により、季節により少しずつその表情を変えるので、本当は『同じ光』というのはないのかも知れません。でも、毎日同じ場所で同じように過ごしていると、そこには『似たもの』が繰り返し繰り返し現れたりもするので、ほんの少しの小さな変化とか、その一瞬がもう二度と無いという特別さとか、そういうものに対して感覚が鈍くなってしまいがちです。そして、撮影者自身が『考える』ということを少しショートカットして、見慣れた空間で『いつもどおり』にコトを進めていく。効率や写真の安定化の面では必要なことでもありますが、それだけになってしまうと『写真』は実につまらないものになります。
ありがたいことに、私たちの撮影の場合は必ず大きく変化する条件があって、それが『被写体』です。私たちは、この世界にたったひとりのそのひとを撮らせていただいているので、その特殊性は被写体ひとりひとりの重要なポイントです。
撮影空間は大きく変わらないけれど、見慣れた空間で見慣れないそのひとの為の写真を撮るには『観察すること』と『演出すること』が大切だと思っています。前述の通り、毎日ここで撮影をしている私はこの空間を見慣れています。朝は何処から光が入って来て、それがどのように動いていくのか把握していますし、どのポイントから撮影すればその光を効果的に使えるかを知っています。それらはあくまでも『情報』であり、私はその情報に基づいて演出プランを練っていきます。
演出すべきは、被写体である『あなた』。目の前の、そのひと。その演出が狙う効果は、『あなたの存在の美しさを表現すること』。抽象的ですがシンプルで、汎用性があって良いと思います。
私は撮影者として、観察しなければなりません。『あなた』の美しさを、『あなた』という存在を、そして見慣れたこの空間の中でそれを表現できる条件を、探します。ライフスタジオはそこのところが結構自由なので、撮影者の能動的な撮影構成こそ要であり、醍醐味です。
初めましての、見慣れない被写体であるそのひとは、6ヶ月のBabyでした。ライフスタジオ自体も初めてのご利用だったご家族で、ぷくぷくのボディが最高なそのひとは来店時からとてもご機嫌で、人の顔を見てはきゃっきゃと笑い、うつ伏せをさせれば手足を浮かせて大はしゃぎでした。
笑ってくれるBabyほど可愛いものはありませんし、笑うに任せて笑顔のオンパレードでも問題はないでしょう。でも、『彼の存在の美しさ』を表現しようとするなら、それではあまりに演出が浅いような気もします。人生という時間で考えればごくごくわずかな『赤ちゃん』というシーズンの真っ只中にいる彼の魅力は、美しさは、きっともっと、こう……なんかあるはず、と考えながら、ファインダーから目を離してその空間を、見ました。
この時キーになった自然光は、ここ最近いつも何気なく眺めていた冬の午後の光でした。キラキラして綺麗、そんなことをぼーっと考えながら見ていたその光を『キラキラして綺麗』な感じに使いたくて、手前に金属製の籠を置いてみました。
金属の籠は、その網目の直線や曲線に光を反射して玉ボケを幾つも作りました。『キラキラ』、正にそんな感じのグリッター感が生まれ、ファインダーの中がぱっと華やかな光に満たされます。
コーディネーターの西やんに、
「次、下を向いたらそのままで」と小さく声を掛けました。ぱっちりカメラ目線の笑顔の写真ももちろん可愛いですが、華やかな光の中では過剰な気もして、目線が逸れるタイミングを意識してもらいます。西やんはすぐに、持っていた小さなおもちゃを彼に渡して、彼の目線は自身の手元に誘導されました。
長い睫毛と、小さな手のぷっくりとした柔らかな質感、丸いほっぺ。赤ちゃんの、赤ちゃんたるボディライン。この曲線と長い睫毛に、私は生後6ヶ月のあなたの美しさを見ました。華やかな光は、その美しさを際立たせて印象的に演出します。この時、カメラの露出計は露出過多を示していましたが、それで良いと思いました。それが、良いと思いました。
赤ちゃんが手元を見る、ただそれだけの瞬間です。天気が良ければ、いつでも見られる光です。この写真を構成しているのは、それぞれにいつもそこにある、何気ないものたちです。
カメラを通してそれを見た時、その瞬間の写真を見た時、何気ないものたちがいつも特別だったということを知ります。
キラキラした綺麗な光、眩しいくらいの華やかさ、そこにいるニュートラルな状態の赤ちゃんの美しさ。見慣れた空間と光の中で、思考する撮影者とコーディネーター。カメラの機能を駆使した演出効果。それらが掛け合わさって、生み出された写真です。
何気なく眺めていることの中に、些細なことに、二度とない一瞬の特別さがあります。
カメラには、たくさんのそういう特別な瞬間のことを教えてもらいました。
きっと、これからも。
毎日は、特別で大切なことで、溢れています。
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