私は何人の子供たちにチューをせがんできただろうか。
兄妹がやってくると、しきりにチューをせがんでしまう。
しかしチューひとつ取っても表現は子供の数だけあり、熱烈にお互いにチューしあう子達もいれば恥ずかしがって顔を覆う子まで様々。
「チューしてあげて！」
その投げかけに
しっかりものでやさしいお兄ちゃんが、そっとキスをした。
やさしく差し込む西日が、ふたりに良く似合っていた。
 
撮影中は何よりも空気を大事にしたい。
コーディネーターと共に空間を作ること、被写体が己を表現してくれるよう環境をつくり出すこと、
それが出来て初めて被写体が活きてくる。
 
その後、私達カメラマンはその環境によって引き出された渾身の表現を余すとこなく写真に収めていかなければならない。
元気に走る姿を撮る為にシャッタースピードを早めたり、
手を伸ばすことを予想して画角を広めに取ったり、
ふとした表情を淑やかに押さえるためにライティングを組んだり、
静かな空間では影を撮ってみたり。
被写体の瞬時の「表現」を逃さない為に空間を予想し、写真に「表現」するための条件をそろえてシャッターを切ることが私達に求められる最大の技術なのだと思う。
実際に全てを予想していくことは難儀というものかもしれない。しかし目指すべきものではあると、西日から教わった。

次は、ひとつでも多くの条件をあつめられるように。