撮影当日、ふたりの姉妹は、笑いながらスタジオの空気を軽やかにかき混ぜていました。
はじめは緊張した姿を見せていましたが時間と共だんだんスタジオに馴染んできました。

じっとポーズをとることよりも、ドレスの裾を揺らしながら動きまわることのほうが、彼女たちには自然なこと。

そんな姿を見ながら、私はあえて逆のアプローチを選びました。
“静”の中にある強さを、光と構図で切り取ること。

今回使用したのは、1灯のLEDライト。
あえて姉妹の背後からライトを配置し、カメラに向けて光源を透過させる逆光セッティングとしました。
光が輪郭に沿ってにじむように設計することで、ふたりの存在が空間の中にふわりと浮かび上がるような視覚効果を生んでいます。

衣装は、揃いの白ドレス。
色彩の統一によって背景とのコントラストを弱めつつ、逆光によるエッジライトが輪郭を定義する“主たる要素”となるように組み立てました。
この手法により、色ではなく「光」で存在感を描く構成となっています。

写真としては非常にシンプルな構成です。
逆光／ワンライト／背景処理なし――いわゆる「引き算」の撮影です。

しかし、だからこそ求められるのは、精緻な露出管理と、ライティングのコントロール。
ハイライトの飛びすぎを避けながら、シャドウを潰しすぎず、なおかつドレスのディテールが残るギリギリの露出バランスを探りました。

また、姉妹のポージングには“作り込み”よりも関係性の自然な距離感を優先し、余白の中に心情を感じ取れるよう心がけています。

この一枚の中に写っているのは、光と空気と、姉妹のこれから。
今はまだ無邪気で無防備な彼女たちが、やがてこの写真を見返したとき、
そこに何を見出すのか。

それを想像するだけで、写真というものの奥深さを感じずにはいられません。

技術と感性の交差点で撮った、静かで力強い一枚です。

Photo by Chiba
Coordinated by Sumisawa
Hair & Makeup by Sumisawa
Written by Chiba