店舗フォトジェニック集
Photogenic
役割
投稿日:2025/6/4
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photo:volvo&kyoto-katsura staff
自分が写真を撮り始めてから、いつの間にか14年が経とうとしている。
ポートレートの「ポ」の字も知らなかった27歳の私は、今ではカメラを30分以上構えていると息が切れる、そんな41歳になった。
14年という時間は、私の体も心も確実に変えていった。そしてそれと同時に、写真業界の空気も大きく様変わりした。かつては紙媒体が主流だったポートフォリオも、今では誰もがスマートフォンで気軽にInstagramを開き、そこに並ぶ写真はどれも洗練され、構図も色味も完璧な「完成された写真」ばかり。
だが、いつしかその「完成された写真」が、時に人の「本質」を覆い隠してしまうことがあると感じるようになった。
写真というのは不思議なもので、技術が上がれば上がるほど、“良い写真”に見えることが増えていく。だが、“良い写真”が“その人らしい写真”であるとは限らない。むしろ、見た目に美しく整った写真が、被写体の内面や空気感をどこか置き去りにしてしまっているように思えることもある。
それは、「どう写すか」が先に決まってしまっているからかもしれない。あらかじめ決められた構図、光の当て方、ポージング。その型に“誰を写すか”を当てはめていく。そのやり方は決して間違いではないし、必要とされる場面も多い。だが、もし本当に“その人”を撮りたいと願うなら、「誰を写すか」を先に見つめ、そこから「どう写すか」を組み立てていくべきだと私は思う。
もちろん、実際の現場ではスケジュールや場所、限られた衣装やセットなど、制約が多い中で撮影することがほとんどだ。思い描く理想通りにはいかないことも多い。けれど、だからこそ撮影者の力が問われるのだと思う。
たとえ「どう写すか」が先に決まっていたとしても、目の前にいる人に寄り添い、「あなたに合わせた写し方」を探し出せるかどうか。
その人のまなざし、動き、緊張の仕方すらも観察しながら、ほんの少しずつチューニングしていく。それが撮影者としての、本当の仕事なのだと、14年経った今あらためて感じている。
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