Photogenic


代々木店
scrollable

Photo 50

投稿日:2016/11/13

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この写真がカッコいい理由は?そもそもカッコいいのか?

■光

9月は雨続きで、ビルも、のぞく空も灰色で少々滅入ってしまう日々だった。

差込む光もぼんやりとして、滅多なことでは日差しを感じらない。

この日も同じく、分厚く重なった雲を通った太陽の光が、ビルとビルの間を抜けて、やっとの思いではいってきて、ぼんやりとインテリアを浮きだたせていた。

だからといって、撮影と写真はぼんやりとさせてはいけない。

どんな環境や状況であっても、撮影者は最高最善の写真を撮らなければならない。

 

ここで考えたいことは、「いい光とは何なのか?」

美しい写真はいい光に恵まれている。写真というものが光で描く絵であるため、「いい写真=いい光」というのは必要条件である。

私がこの写真で出会うことができた「いい光」は、スポットライトを用いたもの。

代々木店の1Fにはスポットライトが多く備え付けられており、おおよそインテリアを全体的に明るくしたり、被写体のヘアーに質感をもたせたりなどの使用が多かった。

だが今回はスポットライトを壁に当て、被写体にはほとんど故意的なライティングをしていない。窓から入って来た鈍い光が、ぼやーっと被写体をかすめるくらい。

本来ならばシャッターを切らない状況。

しかし背景に当たるスポットライトと被写体との露出差が、シャッターチャンスをつくった。

 

背景が明るく、被写体が暗く、大きな露出差がある場合、被写体の顔や表情、色味や質感・トーンはなくなってゆき、さいごには黒くつぶされてしまう。それを「シルエット」という。

シルエットは被写体の形だけでみせなければならない写真だ。

この写真は完全なシルエット写真ではない。もしそうであったならば残っていない写真だ。

シルエットなのだが、被写体に当たる微々たる光量が被写体の顔をうっすら浮き出させて写してくれている。ここがポイントだと私は思います。

ハッキリとは見えない顔があるからこそ、被写体に引き込まれる。

そしてうっすら表情がみえてくると、なんだか退屈そうな、けだるそうな、かといって挑発しているかのようにも見えてきて、いくようにも捉えられるような引き込まれる写真にみえる。

 

また、このスポットライトが壁の中心に当てられ、その中心に被写体が配置されている事により被写体のシルエット効果が強くなるとともに、写真にヴィネット効果が現れ、さらに被写体を魅力的みせる相乗効果となっている。

 

 

■シャッタースピード

光が満たされぬ代々木店1Fでの撮影。顔がかろうじて見える露出にするので手一杯の状況。

シャッタースピードの設定は1/125s

常に俊敏に動き回る被写体をピタッと止めるには不十分なシャッタースピード。それが逆に被写体の足と手にブレをつくり、写真の中に「動」の要素をつくっている。

さらに被写体の位置を中心線から右側にずらすことで、被写体「動」エネルギーが左から右へと流

れ、写真にエネルギーを与えている。

 

 

■構図

望遠レンズを構え、被写体の全身をギリギリまで圧縮した。

圧縮写真はさまざまな効用をもっているが、被写体全身の頭から足先までを魅せる写真は、圧縮すること他ない。被写体へのまなざしを妨げるようなインテリアの線や面をできるだけ写さず、被写体に集中した写真をつくるという意味で圧縮撮影を行った。

頭は違和感がないギリギリでトリミング、足元は靴で切るのではなく、被写体がつくる影を少し取り入れてみた。そうすることにより、被写体が逆光に置かれているという事が分かり、ただの露出が足りない写真でないことを伝えている。

また足下に散らばるブロックだが、このブロックにも役割が与えられている。

グロックが奥から手前に配置され露出と被写界深度の変化を写し出すことによって、背景から被写体までの奥行きをつくり、写真に立体感を出している。

 

 

■ポージング

とても開放的で愛嬌のかたまりのような男の子。

前回にポージングとは、撮影者の意図と被写体の態度が一致するようなものを目指すものではないか…という解釈をしていた。

常にポーズの中には、被写体の態度が含まれている必要があり、態度はポーズに表れる。

楽しいなら楽しいなりの。退屈なら退屈なりの。

では、この写真からはどんな態度が表れているというのだろうか。

上にも書いたようにこの写真からは、表情や感情がはっきりとは読み取れない事から、態度もあいまいにしか答えられない。楽しいでもなければ退屈なわけでもない。

だけど撮影は彼の言動のひとつひとつが全て面白可笑しくて興味深くて、それはそれは楽しい撮影であった。ただ単に楽しい撮影空間であったことを写真の中に100パーセント取り込む事もできるけれども、撮影者としてさまざまな写真の可能性を模索して、固定概念をぶち破って、撮影と写真の幅を拡大しなければならない。それとともに被写体自身が新たな自分に出会わなければならない。

まさにこの写真は、それがなされた瞬間だと勝手ながら思っている。

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