Photogenic
横浜青葉店
Life In Technicolor
投稿日:2022/3/3
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織原家の家族写真は様々な面でチャレンジングなものとなった。
それは、私がずっと抱えてきた写真の葛藤に対する一つの解であり、また横浜青葉店のインテリア総リニューアルによる新たな時代へ一歩踏み出すための露払いとしての意味合いもある。
とはいえ、根は保守的な人間なのでトラディショナル…というか基本に忠実に撮った部分もある
今回の写真分析では改めて、それらをアウトライン、ディテールの両面から切り込んでいく。
①アウトライン
ポートレートにおける顔や体のラインが美しく出ている事は非常に重要で、後に上げる内容よりも個人的には優先度が高い。
いくら笑顔で溢れていたり、なんだか自然だったり、なんとなくおしゃれな雰囲気を醸し出していても、その人の顔や体のラインが美しく写っていなくては結局持ち上げられるのはその場だけで二度と見返される事はない。
一億総カメラマン時代と呼ばれる現代における、プロフェッショナルとアマチュアの決定的な違いがここにある。なんとなくインスタ映えするような写真では二流止まりだ。
Instagramではフェードを活かしたフィルム風レタッチで雰囲気が素敵だが顔が二重顎になってしまっている写真、ダイナミックレンジ豊かな新海風レタッチが目を見張るが二の腕が太く写ってしまっている写真、と言った具合に基本を疎かにするカメラマンは目に余る。
この辺りの写真の基本については正直10年前のカメラマンの方が地力があったが、近年ではレタッチスキルばかりが取り沙汰されているのは残念なことだ。
さてこの顔や体のラインに対するアプローチはもちろん被写体に合わせて千差万別であり、そこまでに至る信頼関係の構築や観察と分析、蓄積してきた知識量などが重要となってくる。
この写真の場合、男性陣は肩や膝を大きく広げて大きなシルエットになっている一方で、女性陣は肩や膝が小さくまとまっている。だけでなく、例えば肩の一部が隠れていたり長女の足は両脚がわかる程度に重なっていたり、次女は膝から踵に至る三角形のシルエットが出ていたりとラインの造形へのこだわりはかなり細部に渡る。
渡るが、これらにこだわる余り体操選手並の組体操をさせるのはナンセンスなので、細かい指示はあくまで最初だけに留め、あとは自然に生まれた動きの中で美しい瞬間のみを切り抜いていく。
②ディテール
この写真のテーマは、家族の関係性。
初めてご挨拶に顔を出した時に感じた家族の仲睦まじい空間。これをどうにかして写真で表現したいと考えた。
この部屋に入った途端、長女がたくさんの本に囲まれたこの空間に喜んで「みんなで本を持ちたい」と言った。
軽視してしまいがちだが、これは単なるポージングの提案以上の意味がある出来事と私は考える。
一方的に指示をする撮影には、カメラマンのエゴしか残らない。撮り手と写り手の双方のアプローチによって写真は完成する。家族写真は尚更だ。
遡れば来店から撮影前のカウンセリング、そして最初のホリゾントでの家族撮影。この時までの間に築いてきた信頼関係によって、徐々に被写体自らの特性が現れてくる。この発言は、それを確かなものにした。
それならばと、写真にストーリーを加速させる。
父が息子の本に指差して何かを教えていたり、母の本に娘たちが集まる様子は全員の個性の発現であり、まさにこれまでの撮り手と写り手が過ごした時間の賜物である。
人物の座る位置も造形上のバランスや視線の導線も踏まえてはいるが、これまたそれぞれの個性を出す事ができて、とある休日を思わせる様な家族のリラックス空間がコンセプトとして出来上がった。
そして、この写真のもう一つの大事な要素が「色」となる。
ご家族の衣装は白。故にモノトーンにシックな雰囲気で撮る事もできたが、今回はこの家族の楽しい空間を演出する為に、たくさんの色で空間を彩ることにした。
自然光ゼロというかなり厳しい条件下であったが、可能な限り自然光らしく撮りたい。
LEDのブルーを拾ってしまうため、彩度を上げすぎる事はできない。代わりに色とりどりの本で背景を彩っていく。家族に渡した本はデニムに合わせてブルー系で統一。その上で個々のキャラクターに合わせて微妙に色を変える。
肌色を損なわない程度に、ホワイトバランスを見ながら慎重に写真全体の色を調整していく。結構しんどい作業であったが、結果的にこの家族らしいポップな空間が出来あがった。
横浜青葉店のインテリアがリニューアルされて、早くも1ヶ月が経つ。
リー社長と直接お話させて頂いて出てきたその幾つかある意図の一つが、これまでのライフスタジオには無かった「色」を確信的に多用した写真の創生であった。
これまでのライフスタジオのインテリアはナチュラル系で、かつ撮影に使う自然光が色をまとめてくれる為、写真における「色」は必然的にシンプルになりやすい。
もちろんこれらはライフスタジオを代表付ける写真であるため今後も続けていきつつ、これらの意図に沿った写真を作り出していくこと、その研究がこのしばらくの課題であった。
今回の写真は衣装、床、そして壁の多くが白という事で、課題の導入としては比較的撮りやすい写真でありつつ、いくつかの挑戦を伴った写真であった。
今後も新インテリアにて、研究を続けていく。
Photo :Hisho Morohoshi
Coordi:Satomi Taira
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