Photogenic


横浜青葉店
scrollable

In my Room,

投稿日:2020/3/20

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Photo&Write by Reiri Kuroki

Coordi by Misaki Nakagawa

 

@Yokohama Aoba

 

 

 

どうか、私たちが撮影する写真が、

君自身や、君を大切に思うひとたちに、

『良いもの』として届きますように。

 

それは、撮影者である私の切なる願いですが、ただ願うだけでは無責任というものです。

ちゃんとそういう気持ちが届くように、自分にできることを真摯に、まっすぐに、ひたすらにやりきることが果たすべき責任でもあり、そうして初めて、その写真は『良いもの』として届く可能性が出てきます。

しかしまあ、ひとの受け取り方は自由なので、自分にとっては最大限やってみましたけどどうでしょう、お気に召せば嬉しいです、くらいの気持ちでないと、おこがましいとも言えるかも知れません。

何にせよ、願うのであればそれが叶うように行動しなければならないし、自分がそうできていないと感じるようなら、届く筈もないのでしょう。

 

まずは、自分から、真摯に、まっすぐに。やりきったと、言えるように。

 

 

 

彼の撮影に入らせてもらうのは2回目で、その年齢の割に素直で無邪気な彼の性格や佇まいの雰囲気を、私たちは少しだけ知っていました。

幼さの残るふっくらした輪郭は、クローズアップで撮ると小さな男の子のようで、思わず可愛いねえと言ってしまう私たちに、照れたように無邪気に笑いかけてくれる、そんな少年。

昨年、初めましての撮影の時は、少しばかりの緊張感が伝わってきたものですが、今年は既に知った顔ということもあるのか、最初から随分とリラックスした表情を見せてくれていました。その、肩の力が抜けた感じが良くて、そのまま寛いでもらいたくて、【きみのへや】感を演出してみます。

そこそこの広さがある青葉店の撮影空間なのに、わざわざ狭い範囲に見た目より重たいベッドをふたりがかりで運び込んで、クッションやブランケット、本なんかをセッティング。

いじっている携帯は彼の自前のもの、イヤホンはコーディネーターのsakiちゃんが事務所まで行って他のスタッフに借りて来てくれました。しかし、イヤホンのBluetoothの接続は上手くいかず、ママさんがご自身の携帯で『鬼滅の刃』の主題歌を流してくれていました(笑)

肩がけのカーディガンがずり落ちているのも、脱力感があって良い。

北向きの窓からはふんわりした柔らかい外光が入って来ていて、それは滲むように彼を中心とした陰影のグラデーションを成します。ドラマチックな強い光ではなく、身近で日常的な、穏やかな光は、彼のその時の存在感にぴったりでした。

力の抜けた、等身大の感じ。『撮影』という非日常な時間の中に、自分の部屋のベッドで携帯をいじっているような『日常』を再現してみることで、彼自身がよりリアルに、ここに馴染む。

 

印象的な光や、緻密なポージングや、複雑な技術によって構成される特別な1枚、と言うよりは、気にも留めないような日常の中の一瞬を、敢えて拾い上げてみるような、そんな1枚。

そういう瞬間が、通り過ぎてみれば愛おしいものだって、我々おとなは知ってしまっているのです。

だからこそ、その『日常的な一瞬』の為に、あれこれ趣向を凝らします。

ここは彼の部屋ではないし、ここに彼の日常は無いのだけれど、それでもそうであるような説得力を持たせる為に、あっちこっちを整えて、写真の中を構成します。

違和感を感じないように。

【きみのへや】、そういう世界観の中で、彼自身の力の抜けた存在感が、きちんと行き届くように。

 

 

 

私たちが撮影する写真が、君自身や、君を大切に思うひとたちに、『良いもの』として届いて欲しい。

そう願いながら、準備をして、構成をして、シャッターを切ります。

 

撮影者である私にできる、最大限のことには手を尽くして、

そして君に、届けます。

 

12歳の君の、等身大の記憶。

通り過ぎてみれば愛おしい、そんな気にも留めない瞬間のこと。

 

 

 

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