OurStory


横浜青葉店
scrollable

Aobaジェニック October.2017

投稿日:2017/11/12

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Photo by Kazuma Gomei
Coordi&Write by Reiri Kuroki

@Yokohama Aoba



私たちの撮影は、基本的にふたり1組で行われる。
カメラマンと、コーディネーター。
ライフスタジオで撮られる写真が、撮影者ふたりの主観や価値観が混ざり合って、より良い相乗効果を生むことができれば、理想的だと思っている。


ここ最近は、コーディネーターで撮影に入る機会が少なかった。
そもそも、コーディネーターへの苦手意識さえあった時期もある。衣装提案、アシスタント技術、撮影空間の場づくり、カメラマンのサポート等々……コーディネーターの仕事は、撮影そのものの細部にまで行き渡り、写真の完成度に影響する。
ひょっとしたら、場合によっては、『写欲』と呼ばれるようなカメラマンのモチベーションにも影響を及ぼすかも知れない。
自分がカメラを持つ時には、自分の手の届かないところを整えながら撮影の場を動かしていってくれるコーディネーターという存在に、感謝してもしきれない。
だからこそ、自分がコーディネーターとして撮影に入る時には、そこまでできているか不安だったりも、する。
さすがに7年目なので、撮影が破綻する程何もできないというようなことは殆どないけれども。笑
(……その筈、だけれども)


この日、久し振りにコーディネーターとして、五明さんと撮影に入った。
被写体は、7歳の七五三でライフスタジオに来てくれた女の子。
町中で普通に見かける「こども」の普段着から、ヘアメイクをされ紅を差し、艶やかな着物を纏った彼女は、穏やかに微笑みながらカメラマンである五明さんや私とのやり取りに応じてくれた。
とは言え、口数は多くなく、「会話」と言うよりは「指示」を受けてくれている、といった印象を持った。
穏やかな、おとなしい子。そんな感じ。
しかし、着物撮影の終盤、少し会話を盛り上げてみようと五明さんをいじってみたら、彼女の反応が変わった。
にやりとした、ちょっと悪い微笑みと、目の輝きを見た時、おや、と思う。
ひょっとして、彼女の本質はこっちにあるんじゃないのか?

そもそも、この撮影は、スムーズだった。
こちらの指示を難なく遂行してくれる、しっかりした7歳の女の子。
ここまでの写真の数々は、そんな彼女を美しく記録している……。
そんな目線だけで見ていれば、彼女のその目の輝きを見過ごしていたのかも知れない。
悪ふざけ、の匂いを感じ取った、彼女の楽しそうな、その目の輝きを。


着物を脱いでドレスを纏った彼女を、思い切り動かしたのは私だ。
しかも、動きの誇張をする為に、ストールさえ持たせた。
五明さんは戸惑ったかも知れない(ごめん)。
でも、チラリと見えた彼女の目の輝きを、もっともっと見たかった。
きっと彼女は、こんなもんじゃない。
もっとやんちゃで、お転婆で、悪戯好きな元気な女の子なんじゃないか?
そして、そういう女の子の姿を撮るなら、五明さんはfitするんじゃないのか?

MOVE、というテーマは、私が入社当時に見たドレス姿で踊る女の子の写真からイメージを繋いでいる。
自分がカメラを持った時、恐らく殆どの女の子のドレスシーンで、それは実践されてきた(勿論、被写体の性格なんかは考慮するけれども)。
ドレスという極めて女性的なイメージの衣装の裾を翻しながら、活き活きと躍動する時の子どもたちの姿は、美しい。
自分のレパートリーとして、一定の水準でその種類の写真がある。それを、いつもとは違う形で構成する。
今回は、五明さんの目を借りた。
自分が被写体を観察して得た情報、自分がいつも撮影で使用している構成要素、それらを他者が構成すると、どんな結果物が生まれるのか。


よく晴れた日だった。光は充分。
被写体は、重い着物を脱いでひと息ついて、身軽になった体を動かしたくてうずうずしている。
私と彼女、ふたりでこっそり打ち合わせをして、インテリアの中のいちばん光が綺麗な場所で、カメラマンを待つ。
撮影はライヴだ、ということを、信条にしている。だからこそ、あまり五明さんとは打ち合わせはしなかった(本当に、ごめん)。とは言え、信頼を寄せるカメラマンであるからこそ、恐らくすぐに『MOVE』のイメージに対応してくるだろうと踏んでいた。私の写真も、彼は知っている。
結果として言えば、勿論五明さんは戸惑い、後の分類室では他のスタッフたちに「五明さんが、玲理さんに撮らされている……」と言われたものだが、そんなことはない(と、信じたい)。
ファインダーの中を構成したのは、五明さんだ。
私は被写体である彼女を観察し、そこから得た情報に基づきイメージを繋いだ。五明さんというカメラマンのことも、幾らかは観察してきた(つもりだ)。それらの情報を、この場の条件も併せて組み合わせて見た時、「いつも」と違う何か面白いものが生まれそうな、確信めいた予感があった。
五明さんならしないであろうことをコーディネーターである私がやり、私が撮らないであろうフレーミングで五明さんが撮ることで、私が「いつも」撮るようなものが、変化を遂げる。

線の多い、直線的なインテリア。水平垂直が綺麗に整えられた構成の中で、翻るドレスの裾と、髪と、彼女が持つストールの予測不可能な動きは際立った。
線の多さをどう処理するかは、青葉店の写真において常々課題点となる。少しの歪みが、写真への集中を妨げかねないことを知っているからこそ、水平垂直を強く意識して整理する。右側に少し前ボケを被せることで、線の多さによるカタさに幾分かの柔らかさを与え、画面全体へのグラデーションのような効果を得ている。
この直線で構成された空間の中で、有機的な生命力溢れる存在として、被写体である彼女の動きと、それに伴って生み出される曲線は目を惹く。
思いっきり、くるっと回ってみようか、という私の声かけに、明らかに戸惑いながらも動きの瞬間を捉えようとカメラを構える五明さん。予測不可能で、瞬間的な形状をどのタイミングで残すのか、ファインダーの中に何処から何処まで入れるのか、くっきりと残すか、少しのブレで動きの余韻を表現するか……ほんの1秒で、カメラマンは決断する。構成する。
その選択の全てが、恐らく普段、カメラマンとして自らこの状況を作り出している私の撮影とは、異なる筈だ。
私は、それが見たかった。
水を得た魚のように、くるくる回る女の子。やっぱり彼女は、こっちだった。その活き活きとした表情は、この写真では見えないけれど、だからこそ溌剌としたイメージを見る人に与える。
わざわざ彼女と同じようにストールを持って、五明さんの後ろで「じゃあ、反対回りいってみよう!」「今度はもっと速く〜」と言いながら、彼女と一緒にくるくる回るのは、楽しかった。その瞬間を逃すまいと、息を止めて、ファインダーを覗くカメラマンの背中に困惑の色は見えつつも(すまんな)、コーディネーターとしてそこは信頼している。
撮影空間は、カメラマンとコーディネーター、被写体である彼女、そして彼女のご家族とで構成されている。
カメラマンだけでは写真は撮れず、コーディネーターだけでもどうにもならない。被写体に緊張を強いていては良いものを残すことは難しく、ご家族の楽しい思い出にはなり得ない。
彼女の本質を、魅力を探す為に観察し、そこから得られた情報と、カメラマンの性質を鑑みて、この場でご家族も楽しめるような雰囲気を作り出す。遊び、楽しみ、動くこと。その先に生まれる、「いつも」と違う『MOVE』。


保守的で無難な自分の撮影や写真に、嫌気がさす時もある。
「いつも」と違う目線で見ること、表現すること、それができない時も、ある。
そういう時は、コーディネーターで撮影に入るに限ると個人的には思っている。撮影の場を、コーディネーターという目線から観察しながら、自分とは異なるカメラマンの視点を共有して、その写真を見て、自分の世界にはないものを知る。

私とは、タイプの違うカメラマンである五明さんは、格好の客観だ。
なかなか一緒に撮影に入る機会はないけれど、そして毎回戸惑わせてしまうのだけれども、
その世界は、私にとっては無いものねだりの、力強くて目新しい構成で溢れている。


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10月の横浜青葉店のベストフォトことAOBAジェニックはこの一枚に決定いたしました!
今月は全員が違う写真を推薦をするという大混戦のフォトジェニック会議となりました。
今回の会議は皆自分の思う一枚に情熱を込めた一票と討論の末決定いたしました。
これからも変わり続ける写真をお楽しみください!^^
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