大人はいつも忙しい。

眠いながらに毎朝同じ時間に起きて
やるべきことに溢れていて
周りの人との関係も気にしながら
ちょっと怠けてしまう時もある。
そしてそんな毎日に疲れてしまわぬよう、
たまに休息をする。

ふと過去を振り返ってはあの頃は…
なんて言う事もあるかもしれない。

でも子供も忙しい。

毎日が新しいものとの出会いで
見て、触れて、嗅いで、舐めて、聞いて
あらゆる感覚を使って覚えるしごとがある。
笑って、泣いて、怒って
思うままに感情を爆発させるのもしごと。

手を抜くなんて事をまだ知らない彼ら。

常に頭も心もフル稼働で、
もしかしたら大人よりも忙しいのかもしれない。


その日スタジオに来た男の子は1歳。

そこにあるのは見た事のないものばかり。
最初はじっくり周りを見回して、情報を集めることから始めた。
やがて好奇心旺盛な彼はぐんぐん歩き出す。

皿をひっくり返してみたり
沢山のシャボン玉に驚いて泣いたり
車の中を探索に行ったり
そして見つけたカラフルなボール。

そのボールを車の下へと転がしてみると
彼は興味のままにそのものを追いかける。

「車の下」というあまり絵になりそうにない場所。

その床すれすれから見える光景は
賑やかな背後のインテリアがほぼ写り込まない。
そこにボールを追いかける彼が現れる。

そこは狭い空間だが、小さな彼の体は全て写り込む。
ムチムチとした腕と丸みを帯びた体のフォルム。
ふっくらとした頬に、ボールを探す真剣な眼差し。

この車と床に囲まれた何もない空間だからこそ、
1歳の彼という存在が際立つ1枚となった。


笑って、泣いて忙しかった1日。
今日もお仕事お疲れさまでした。


Photo by Masakuni Kikuchi
Written by Ayako Kai