人間は自然には勝てない。

そんなことをただ思ったあの日のこと。
ちょうど電球が切れてしまって、暗い部屋の中で、電車が止まって帰れなくなった友達と
テレビに映る恐ろしい中継を見ていた。
嘘のような映像、
聞こえてくるのは慣れた土地の名前、
しばらく続く余震に地震酔いをして、久しぶりに酔い止めを飲んだ。

無情だなと思うのは、今は穏やかに凪ぐ海ときれいな空があって
東京でもそれは同じようにひろがっている。
何もなかったかのように。

人は忘れてしまうもの、
忘れると思い出すことがなかなかできない生き物
だけどこれだけは忘れたくても忘れられない出来事で
忘れてもいけないことだ。
いくら歳を重ねても。

急に連れていかれてしまった何万人もの人々の魂がどうか少しでも安らかに
そして、大切な人を失った人々の傷が少しでも癒えていくように
ただ、願わずにいられない。

２０１５年３月１１日