いつかの父も、いつかの母も、僕の口へあーんとスプーンを運べば、
不思議と同時に口を開けていた。
うる覚えだがそうだった気がする。

食べさせる側までしてしまうこの仕草の意味も名前も僕は知らないが、
客観的に見れば愛おしく感じたそんな仕草だった。

食べる喜びは誰もが最初から自分で知ったものではなく、
誰かから食べさせてもらうことによって知ったものだと悟らされたそんな光景。

毎日子育てをしているママにとっては、何気ない日常かもしれない。

しかしあの日、僕にとってひと匙のスプーンを運ぶその姿が美しく輝いていた。

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