「ノスタルジック」

どこか遠くを見つめる目。その先にあるものは何だろうか。
私が見ている風景と彼の見ている風景は、きっと同じであって同じでない。
心の中の思い出が静かに広がっては淡くなって消えていく。
胸が締め付けられるような、でもどこか満たされていくような。

誰でも昔は子供だった。
でも、あっという間に大きくなって大人になって、
小さい頃のことはだんだん忘れてしまう。

あの頃、何気なく感じていた喜びや悔しさや感動は、
なぜか今になってより一層輝きを増すばかりで、
それはふとした瞬間、突然よみがえる。
そしてそういう小さな小さな思い出たちが、
そっと今の自分を支えてくれているような気がする。

帰りたいけど帰れないあの頃は、夏の蜃気楼のようにゆらゆらと
空の遥か彼方にあるようで、それを見つめる目は自然と遠くなるようだ。


Photo by ueda
Coordinate by takeuchi