写真を撮るときには「こうすればいい写真になるんじゃないか」という仮説を立てる必要がある。

一瞬を切り取らなければならないライフスタジオのカメラマンたちも頭の中では常に仮説を立てることと立て直すことの連続が起こっていると思う。１月に新しくオープンした「ライフスタジオ名古屋西店」では、ライフスタジオの写真をさらに良くしていくための試みとして「写真オリンピック」と称して写真改革に取り組んでいた。我々所沢店も結構な時間や労力を投入して参加させてもらった。一旦撮影も終わり、写真も出そろったが、構想から撮影が終わるまでの約２か月の期間は先の表現通り「仮説」からの検証、そして新たな仮説の連続だった。

 

仮説を立てるには根拠が必要だ。今回の場合でいえば写真オリンピックが求めている方向はどこなのか？という部分。しかし、これは簡単だ。なんでもそうだが、催し物の方向性は主催者に聞けばいい。Lee社長の書いた写真オリンピックの概要にはこのように書いてある。

 

私たちがやるべきことは新しいスタイルの創造ではなく
雑誌や広告が作られるシステムを導入することだ。

 

これを読んだときに感じたことは「もしかしたら写真オリンピックというのは０から１を作る作業ではなく、１を１０にする作業かもしれない」ということ。新しい何かを生まなければいけないのではないかという強迫観念に押しつぶされそうになりそうではあったが、このように考えたことで道が開けた気がした。

これにより所沢店の立てた仮説はこうだ。

 

「雑誌のように」撮るのではなく「雑誌として」撮る

 

そのために決めなければいけないことが以下のいくつかのことだ。

・流れるように行われる現状のライフスタジオの撮影システムで撮影してはいけない

・衣装、光、背景、ポーズ、小物、写真に写るそのすべてに撮影者の意図があり、統一されてなければならない

 

そして、集中したのはここだ。

・衣装と小物

・ポージング

 

雑誌の写真に特別は構図はほとんど無い。だから今回はカメラマンが構図で違いを作る必要はあまりないと思っている。

しかし雑誌の写真に衣装が変だったり乱れたりしてるものは一つもない。重要なのは「見た目」である。そういう点では今回のこの大会はコーディネーターの比重が大きいと思っていたし、実際そうだった。衣装と髪型が写真の大半を占めてしまうと思ったからだ。その点では構想に時間をかけたのは良かったと思う。私の漠然として「こういうのがいい」という意見に対して、工藤さんが衣装を見繕ってくれ、ようちゃんとなっちゃんがその子に合わせた髪型をしてくれた。そこが締まらなかったら、正直何も撮ることができなかったと思っている。感謝しかない。

とはいえ、カメラマンが何もしないわけではない。最も重要な役割「ポーズ作り」がある。

雑誌を参考にしてポーズを作り出すことはよくあることだが、いつも違和感をぬぐえないのはそのポーズが目の前の被写体である子供たちに合っていないことである。雑誌を参考にする弊害はそこにある。雑誌をたくさん読んで、ポートレートの知識はたくさん頭に入ってはいあるのだが、いざ撮影になると、目の前に繰り広げられている現状は雑誌のそれとはまったく異なるのだ。異なるにも関わらず頭にあるポージングを目の前の被写体に適用すれば、当然違和感が生じる。だから「雑誌のように撮る」のではなく「雑誌として撮る」ことにしたのだ。

この言葉に違いは、主体が被写体ではなく撮影者にあることを意味する。用意された明確な背景があり、それに合わせた衣装と小物が存在する。あとはそれらに合わせたポーズを適用していくのだ。

 

それでは子供たちの良さや個性が消えてしまうのではないかって感じましたか？そんなのライフらしくないと。

もしそう思うのなら、上にスクロールして見直してみてほしい。この写真から彼女の良さは消えてしまっているように見えるでしょうか？もしそう見えるならごめんなさいだが、私の目にはいきいきしているように見える。

 

方法は変えるが、理念を変えてはいけない。人らしく撮るという根底は変わりません。確かに使い方を間違えば個性は消えるでしょう。しかし、そうしないのがライフスタジオですよね。

 

遠い地で出会った元気いっぱいのモデルさんに感謝。