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京都桂店
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『Look at…』

投稿日:2016/9/29

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life studio KOSHIGAYA

 

photo by volvo

codi by takako

 

写真の構成要素で一番大事にしている事を考えるとき、どうしても写真に「統一感」があるかどうかという点から
私の考えは逃れることができません。
毎度同じことを書いているかもしれませんが私にとって統一感というのはそれくらい大事で
むしろ統一感が成されていればそれだけでいいとも思うくらいに重要視しています。


統一感を出すにあたりこの一枚が何か特別なことをしたわけではなく
75枚全てに統一感が出るよう意識して撮影はしていますが
特に集中して表現がされた写真というのはこのように紹介したくなるもののようです。


テーマは「今の彼女の最も美しい部分に集中する」というものです。当たり前の言葉ですが笑。
カメラマンは写真を撮るにあたりシャッター越しに見る被写体を見て、どのように写すかを
規定をしなければならないと思っています。
彼女を撮影するにあたり私の中で規定したことは二つです。

1:「被写体の美しさは何なのか」
2:「それを写真として表現する手段は何が適切か」
 

彼女は16歳。
書いてみてびっくりしたが今の私のちょうど半分の年齢です。
まあいつもは年齢の30分の1くらいの子供たちを撮っているのがほとんどなのですが・・・。

彼女は中学生から高校生へと階段を上がり始めたばかりです。
人生の変化が最も大きいこの時期に撮影にきてくれたという事の意味は理解せずとも感じるものがあり
小学6年の妹と2人姉妹を持つおおらかなお母さんからの要望もまさに
「中学から高校へ進級した」という変化の記憶を残したいというものでした。

春まで着ていた中学校の制服は膝を余裕で覆うほどの長さのスカートと明るめの紺色のブレザー。
その姿は中学校に入学したばかりかと思わせるほど幼く見えるものでした。

対して高校の制服は急にスカートの丈が20センチくらい短くなり
どう見ても「女子高生」といった風貌へと変化をとげていました。

いでたちは大きく変わり、写真として変化を残すには正直十分な材料が揃っていました。

しかし私の中ではただ衣装だけが変化した彼女を撮ることに何だか物足りなさを感じる
部分があり、話をしてみたり、色んなポーズや表情、輪郭を確認してより観察をするようになりました。

その中で私は彼女を規定する核心的な部分は制服ではなく、彼女の「目」なのではないかと思い始めました。
思い返せば気になっていたのは「こんにちは」と声をかけた瞬間に私と顔を合わせすぐにそらした目。

その目は「照れ」と「素直さ」が混ざったようなとても綺麗な瞳でした。

 

望みである「変化の記憶」をただ制服の変化を残すだけでは現象に過ぎず
特徴のある「目」が訴えてくる様々な感情にフォーカスを当てたいと私の中で決定するようになり
そんな時、何か表現のきっかけがないかと探していたところお母さんが考えてきてくれた提案は
「化粧をする」事でした。
 

化粧しながら変わっていくその目には、高校生へと進級し大人へと進んでいく変化と
彼女が本来持っている「素直さ」を秘めた変わらない瞳が混ざり合っていくような感覚を覚えました。

化粧が終わった後のその「目」を見た瞬間規定し
目だけにフォーカスを当てられる方法を考え
統一感を持って女性らしく表現する事を選択しました。
 

繰り返し説明するようですが、統一感とは写っている全ての構成要素が
「その一枚専用」になっている事を意味しています。
「その一枚専用」にするためにはフォーカスを当てている「目」
女性として美しく表現する「ポーズ」、そして光とインテリアとの調和が必要です。

それらを具体的にあげてみるならば
 

「目」にフォーカスを当てるという事において集中したことは

1:窓の反射によって「目」意外がぼやかされ、彼女のまつげが化粧によって巻かれている感じを強調している点

2:「目とまつげ」の両方が強調される視線の角度を斜め上と規定すること

 

女性らしく表現するという事において集中したことは

1:彼女の左手が顔に少しかかって目以外の部分の気をそらす作用をしている事

2:窓の反射が強めに出ている事で右肩や後頭部の部分が見えにくくなっている事

 

インテリアとの調和という事において集中しているのは

1:右端に配置されている窓の格子が重心の均等化と引き締め効果を担っている事

2:真ん中の格子は彼女を物陰に隠れさせ、まるでクリスマスに相手を待つ彼女をショーウインドウ越しに目にしたようなイメージを持たせる事

 

重要なのは「光」と「右端の窓の格子」です。

「光」は撮影をするにあたり一番最初に見なければいけない構成要素のひとつです。
一般的に「光」といえば<被写体に対して>という前置詞が付くことが多いですが
光とは写真の全ての構成要素に関係があり被写体にあたるいわゆるメインライトだけではなく
色んな副次的な関連がされています。

例えば窓の反射をこの写真のように彼女の目だけにフォーカスが当たるよう
表現するためには、そうなる為の「光」の調節が必要です。
背中の部分が反射でほとんど見えなくなるようにすることも同様です。

もちろん彼女自身にも光が当たるように左を向いてもらいメインライトも確保しつつ
ちょうどいい場所を探し出します。
これを3秒くらいで判断します。やってはいけないのは時間を掛けすぎることです。
主役は光ではなく彼女であることを忘れてはいけません。


次に「右端の窓の格子」ですが、これは「重心のバランス」を取る役割をしています。
写真の重心とは写っているものの質量のバランスの事を言います。
写真の左側にばかりものが写っていれば重心は左に寄っているということになりますが
この写真では被写体が左にいることから重心が左に寄りがちなところを右端に格子を入れる事で
左右の均等を図っています。

もしも右端の格子が無かったら、私はこの写真を選択しなかったかもしれません。

 

被写体の美しさを表現するということと、写真に写る全ての構成要素が連結し全てが意味のある状態になる事が「その一枚専用」になる事

であり、それが私たちがスタジオで「人を撮る」という事の核心ではないかと考えています。

 

撮影後、隣の中学に0−8で負けるようなサッカー部に入っていたくせに自分はプロよりうまいと思っていた自分の16歳のころを思い出し「自分はあの頃何も考えていなかったな」と撮影に来てくれた彼女のしっかりした言葉使い聞きながら考えてしまいました。

家に帰り、自分が高校生の頃の写真を探してみましたが、友達とふざけているプリクラしか出てきませんでした。

写真を撮るというのは重要な事ですね。

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