真夜中は一人、今はそっと時間を見つめている。　　少し遠い感覚で   産まれた子供を見せる約束をしていた   互いに距離はそう遠くもないからと、   いつでもという中   スケジュールはすれ違った。   今度ご飯食べよう、そんなやりとりをしながら   もう会えなくなった。   あの人は帰らぬ人となった。   あの人の言葉を思い出す。声まで思い出す。   あの人一倍大きな声がよく聞こえる。   何度もアンタなってないよ！と怒られたものだ。そんな記憶ばかり   そして何かとご馳走してくれた。そんな記憶。   真夜中、私が見つめている時間は決してさびしいものではなく、   とても暖かい思い出。　   共に闘っていた暑い日の思い出。   あの人は死んでも元気だろう　　そう思う人   死してなお、僕を元気づけよう、成長させようとしている人   不思議と今さびしくない。   ため息は出るが、　　 私のため息さえ吹き返す鼻息の人だから     真夜中の時間を見つめる私は、　 こんなことではまたあの人に怒られるなと、頭を搔いて席を立ち   時を貴く思い眠る。   「大切にします。」