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もうひとつのシャッターチャンス

投稿日:2018/9/6

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私たちカメラマンは、被写体に様々なポージングを要求します。

そのポージングというのは、定番のものから、そのとき閃いたものなど、様々です。

インテリアやコーディネート、その子の性格などを観察・把握し、カメラマンのセンスによりポージングは生み出されます。その子自身の動きに合わせて撮ることも多いですが、ジュニアや大人の撮影ではポージングは必要不可欠です。ほとんどの方が、棒立ちになってしまいますから。

撮影中、被写体を「観察」し、「想像」し、「理想」が生まれ、ポージングを「要求」して「結果」が出ます。

一般的にはその「結果」が”シャッターチャンス”となります。

ですが、面白いのは「結果」の先には"もうひとつのシャッターチャンス=ボーナストラック"がある、ということです。

音楽のアルバムでよくあるものですね。

映画で言うと、エンドロールが終わったあとに流れる数秒間のアレです。

そのアレが、私は大好きなのです。

どういうことかと言うと、「結果」が終着地点ではなく、その先、もしくはその前後には、まだまだシャッターチャンスが溢れているよ、ということです。

 

 

 

いかにも、今回の写真はボーナストラックで撮影しました。

それでは、ボーナストラックまでの道のりを辿っていきましょう。

 

 

 

まず、今回のポージングについてですが、七五三の撮影に限らず、被写体に上を向いてもらうことはよくあります。

上を向いてもらうと、どこか儚げな表情が撮れたり、時に色っぽく、時に神秘的に撮ることが出来ます。

今回の写真の元々の「理想」は、そのような写真を撮りたくて上を向かせました。

ですがこちらの写真は、その「理想」による「結果」のさらに先の「ボーナストラック」で撮影したものです。

ボーナストラックを生み出す為には、ポージングの「要求」から「結果」を出し、その「結果」でどう遊んで、どう見つけるか、です。何を見つけるのか。そう、もうひとつのシャッターチャンスです。

これは、今回のような上を向かせるシーンに限らずのことです。

 

 

 

【ボーナストラックの生み出し方】

1.あるポージングを被写体に要求する

2.そのポージングを被写体自身でやってもらう

3.結果が生まれる

4.シャッターチャンス到来

5.その後もファインダーから目を離さない

6.何かしらの予期せぬ出来事が起こる、起こす

7.ボーナストラック突入

8.もうひとつのシャッターチャンス到来

 

 

こちらの流れでまず重要なのは、2番です。

私たちが細かいポージングをガチガチに決めてしまうと、その子らしさが失われます。私たちは手を加えずに、その子自身にやってもらうことにより、その子の個性が生まれます。

 

一瞬脱線させていただくと、足の裏を見る仕草をやってもらいたいとき、「足の裏に何か付いているよ」とよく声がけをします。その一つの声がけは、子どもの数だけポージングが生まれます。理想通りに見てくれる子、ピョンっと足を持ち上げて見る子、まさかの内側からガニ股で見る子。全てが個性であり、全てがシャッターチャンスだと私は思っています。

子どもって、可愛いですね。

 

さて、2番である程度のポージングが出来たとします。では、その瞬間を撮るのか。

撮るでしょう。やらせたのですから。

面白いのはここからです。6番です。ここで、その子の個性が出てくることが多いです。

予期せぬ出来事というのは、スタッフが起こしてもよし、なんらかの奇跡が起きてもよし。神頼みみたいなところもありますね。

 

 

この写真は、まさしく「扇子を顎にチョンってやって、上向いて、目をつぶって」という要求をした、数秒後の写真です。

 

 

ここで、彼女について少しお話しをしたいと思います。

彼女には少し年の離れた兄たちがなんと3人もいます。4人兄弟の末っ子ちゃんです。

なんせ兄たちが元気すぎる子たちだったので、割とすぐに笑顔を出してくれました。

この写真は、撮影が始まってから10〜15分ほど経ったころでしょうか。撮影の雰囲気も温まってきたころです。

そんなときに、私は先ほどのポージングを要求します。

彼女は頑張り屋さんでしたので、私の要求通りにやってくれました。

そこでアシスタントのソンボンさんか私かが、おそらくしょうもないことを言ったのでしょう。

「目つぶって〜〜口閉じて〜〜鼻の穴も閉じて〜〜」

詳細は正直覚えていませんが、まぁきっとこんな感じだったでしょう。

彼女は笑っちゃいました。

"どこか儚げな表情が撮れたり、時に色っぽく、時に神秘的に撮ることが出来る"と言っていたポージングで、笑っちゃいました。

それを待っていました。

私からすると「よくぞ笑わせてくれた」という感じです。

めでたく、ボーナストラック突入です。

このように、私はポージングを要求した際の"前後"にも、たくさんのシャッターチャンスが溢れていると思っています。

そしてボーナストラックに突入したら、一緒に笑いたいのはやまやまですが、制限時間が極めて短いので、絶対にファインダーからは目を離してはいけません。

 

 

 

今回の写真は、彼女の表情に集中出来るように、余分なものは写していません。

おかげで、この写真からは彼女の笑い声が聞こえてきます。

逆光も、彼女の表情に陰影を付ける良い役割をしてくれています。

 

 

 

私たちは何を撮らなければならないのか。

整理されたインテリアなのか。綺麗な前ボケなのか。美しい光なのか。

もちろん全て必要なことですが、一番に考えるべきなのは、被写体です。なぜなら、お客様は子どもの成長を撮りに来ています。私たちの技術の見せつけよりも、子どもの表情が最優先なのです。

それを私は忘れないようにしたいと思っています。

 

 

 

Photo:Yuri

Codi:sb-kim

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