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ソーシャル・ビジネス 革命
投稿日:2012/6/13
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ソーシャル・ビジネス 革命
ムハマド・ユヌス
蒔田 清子
グラミン銀行と言えば、ピンと来る人もいるだろう。
バングラディッシュから始まり、今世界中で注目をされ進んでいるグラミンバンクシステム。
最初経済学部の大学教授だったユヌス氏は、小さな村の現状を無視することができなかった。高利貸しからお金を借りなければ何もできない状況で、その利子を返すために貯蓄をするどころかさらに働かなければならない状況をつくろだしていた、その中でユヌス氏は自分のポケットマネーから少しのお金だったが(村の人にとってみれば大きい)自分で返し、担保なしに村の住民に易い金利でかすことを思いついた。それが今のグラミンバンクの始まりの物語である。
この本を読むと、現在の資本主義の中にある矛盾と戦い、ソーシャルビジネスを進めるユヌス氏の強い意思と、人間に対する世界観が綴られている。
私がまず注目したのは、ユヌス氏の人間や社会、世界に対する世界観である。ユヌス氏は経済学者として大学で、資本主義や現在の経済システムを唱えていたが疑問を持つ、それは現在の資本主義が人間の本質を誤解しているからである。
ユヌス氏は言う、現代資本主義はでは、ビジネスを営むい人間は一次元的な存在として描かれており、利益を最大化することが唯一の目的だとされているい。つまり人間は利益の最大化と言う経済的目標を一途に追い求めるとみなされているのだ。人間は多次元的な存在であり、人間の幸福には、金儲けだけでは無く、様々な要素が噛み合っているはずだ。
それでもエコノミスト達は、人間が自己利益のみを追求して経済活動を行うと言う前提でビジネス理論全体を構築してきた。そして個人が自由に自己利益を追求する事によって、社会的利益が最大になると結論づけた。この人間性の解釈は、政治、社会、感情、精神、環境ん窓、人生そのほかの側面が果たす役割を否定している。
確かに人間は利己的な存在である、しかし同時に利他的な存在である。
この人間性のゆがんだ見方こそ、不完全で不正確な経済思想を生み出している致命的な欠陥だ。その欠陥がつもり積もって、今日の様々な危機が生まれた。現代の政府規制、教育制度、社会構造はいずれも、利己的な動機飲みが真実であり、注目する価値があると言う前提に基づいている。これらを解決していく手段として、ユヌス氏が掲げているのが、2種類のビジネスが必要であるということ。一つは個人的利益を月休するビジネス、もう一つは他者の利益に専念するビジネス。
前者のビジネスの目的は、他者を犠牲にしてでも企業の所有者のビジネスを最大化することだ。一方、後者のビジネスでは、すべてが他社の利益の為に行われる。他社の役に立つという喜び以外、企業の所有者には何の報酬もない。この二つ目のビジネス、つまり人間の利他心に基づくびじねすこそ、私の言う「ソーシャル・ビジネス」である。現代の経済理論にかけているのはまさにこの考え方だ。
ここでいう、ユヌス氏の人間に対する世界観、最近私たちの中でも世界観の確立と言うことが盛んに叫ばれるようになった。
人々が、人間に対する正しい世界観を持つことが今の世界を変えユヌス氏の言う「貧困の無い世界を創る」と言う行為の根源であることは間違いが無く、私たちライフスタジオで行なっている討論の目的でもあるだろう。人間をどう捉える日によって、社会正義や公共性そして世界の半分が餓えるいるこの現実を解決する第一歩であると言うことである。
私たちが日々、人をどう捉えそしてどのように自分自身が生きるべきかを考えていくと言う行為はその一歩であると考える。
聖書のなかには人間はパンのみで生きるのでは無いと言う言葉があるように、これは人間が多次元的な存在であることを示している。
そしてこの捉え方がソーシャル・ビジネスを提唱し、世界を変えていこうとする一歩になっている。
では、そのソーシャル・ビジネスについて考えてみたい。
ソーシャルビジネスには二つのタイプがある。
一つ目は社会問題の解決に専念する「損失なし、配当なし」の会社で、企業を所有する投資家は、上がった利益をすべてビジネスの拡大や改善に再投資する。これらをユヌス氏はタイプIのソーシャルビジネスとよんでいる。
二つ目は、貧しい人々が所有する営利会社だ。これは直接所有される場合もあるし、特定の社会目標に専念するトラスト(信託期間)を通じて所有される場合もある。ユヌス氏はこれらをタイプⅡと呼んでいる。グラミン銀行はタイプⅡのソーシャル・ビジネスの一例だ。
ユヌス氏は、新しい考え方であるソーシャル・ビジネスのタイプIを七原則としてまとめている。
①経済目的は、利益のい最大化ではなく、人々や社会を脅かす貧困、教育、健康、情報アクセス、環境問といった問題を解決することである。
②財務的、経済的な持続可能性を実現する。
③投資家は投資額のみを回収できる。投資の元本を超える配当は行われない。
④投資額を返済して残る利益は、会社の拡大や改善の為に留保される。
⑤環境に配慮する。
⑥従業員に市場賃金と標準以上の労働条件を提供する。
⑦楽しむ!
またソーシャル・ビジネスは社会的起業とか社会事業とは異なる。
寄付を受動的に受け取るのではなく、経済システムに積極的に関わり、独力で自由市場経済に参加し始める。これは非常に大きな力となる。そして、貧困、格差、圧力等の誠の長期的解決につながるのだ。
ソーシャル・ビジネスは経済システムの新しい考え方だ。今までの経済が人間を中心としてでは無く資本、お金を中心として回ってきて、そしてお金を中心として人を対象化してきた。しかしソーシャル・ビジネスは人の捉え方から違う視点を持ち、多次元的な人間はソーシャル・ビジネスという新しいシステムを使って、世界を変え、貧困を無くすことができると語られている。
私たちライフスタジオも多くの討論等を重ねてきた。その中になぜ世界の半分は飢えるのかと言う本もあったし、木を植える人と言う本もあった。その中でも、そのソーシャル・ビジネス革命にも書いているが、まず自分自身の世界観、人間観を確立すること。そして小さなことから始めること。世界の裏側を悲観し何もできないと嘆くのでは無い。自らの動きを作って行くことである。
この本にはソーシャル・ビジネスは現実主義であり、公開性を重んじ、そして実験を繰り返していくことを奨励している。そして行動しながら小さいことから学んで行くことである。
ビジネスは絵空事では無い、NGOやNPOなどとは違い自らが他の企業と戦い市場を勝ち取って存続していけなければソーシャル・ビジネスの価値はないのである。
現実的に事業計画書を念密になるべきだし、事業の修正も行われる。そしてすべてを公開する。そうすることができてこそ、信頼を勝ち取り他の企業と戦って行ける道である。
そして実行、実践しながら進んでいくこと。
私たちは日々何かを求めるように生きている、今のグローバル社会の中では世界は一つであると言う考え方が主流であり、どんな情報も瞬時に手にすることができる。私たちは今何をするべきなのか。
人間が人間らしく生きることのできる世界を作ることが社会正義であるとするならば、具体的な方向性の一つとしてソーシャル・ビジネス論といえる考え方を私たちの中に取り入れて行くことも有効であると考える。
人は多次元的な存在である、給料をもらうためだけに働いているのではない。人生をより良く意味のあるものにしたいと誰しもが願っている。その根本を今一度考えさせてくれ、そして具体的に動いていくことを促していくれる本である。
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