店舗フォトジェニック集Photogenic

Brand New World,

2020/2/20

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Photo&Write by Reiri Kuroki

Coordi by Kaori Kobayashi

 

@Yokohama Aoba

 

 

 

彼がそこにいてくれることが、私はとても嬉しかったのです。

1年10ヶ月振りの再会を、楽しみに待っていました。

 

そして、彼を撮るなら、新しくなったこの場所で、と決めていました。

 

 

 

私たちが撮影する写真において、『空間』は重要な要素です。

『背景』ではなく、『空間』。それは、限られた『写真』という四角い範囲の中で、そのひとの存在感を際立たせる『世界観』となります。

そしてそこは、ただお洒落であれば良い訳ではなく、かと言ってフォトスポットとして完成させてしまうものでもありません。

私たちは『ひと』を撮っています。その目的において、撮影を行うその空間には、被写体であるそのひとと、撮影者である私たちが自由でいられることを許容する余白も必要です。

完成され過ぎた空間は、そこに初めて訪れる『ひと』にとっては居心地が悪いかも知れません。撮影者にとっては、写真に撮る範囲や角度を限定され過ぎてしまうかも知れません。そういう不自由は、写真の中に違和感となって残るかも知れません。

その空間の中に、その『ひと』という存在をニュートラルな状態で受け容れるだけの余白が必要で、撮影者は空間と被写体を違和感なく馴染ませる為に、その余白を主体的に埋めていかなければなりません。

コーディネートで演出し、ポージングで無駄な力を省き、時には遊びの提案で撮影者の干渉の気配を遠ざけながら、あるいは構築した関係性に基づいた距離感で、そのひとの魅力を、美しさを探し、表現する。

ライフスタジオの空間での撮影は、そうあるべきだと思うのです。

 

……とは言え、完全な自由は時に撮影を破綻させることもあるので(笑)、だからこそ、撮影空間のインテリアはひとつの道標として機能します。

そこに差し込む光、構造物の面や線、色や質感、配置された小物……そういう様々な構成要素が、色んなイメージと結び付きながら『世界観』としての印象を担い、全体像の大枠を固めてくれます。

だから、私たちはインテリアを自分たちで造る、という過程が必要なのでしょう。

ここで『ひと』の写真を撮る、その瞬間の為に。

 

 

 

そして私は、彼をここで撮りました。

 

1歳の頃から毎年、年に1回の撮影を担当させてもらっている男の子。

2019年はランドセルを待っている間に撮影のタイミングを逸してしまったそうで、今回は本当に久し振りの撮影でした。

毎年来てくれていたからこそ、せっかく新しいインテリアができたのだからそこで撮ってあげたい、というシンプルな動機も勿論ありました。

しかしもうひとつ、撮影者として、この新しい空間で『彼』を表現してみたい、という、挑むような気持ちも、あったのです。

 

 

敢えてインテリアの全景ではなく、狭い範囲で『彼』を表現してみます。

そこは狭くて、ごちゃごちゃしていて、でも少年の好奇心や冒険心を刺激するようなところ。男の子は、狭くて雑多なところを『ワクワクする場所』として転換できるものなのです。

実際は車の荷台なのですが、まあ、車の荷台であることが分からなくても別に良い。そこが狭くてごちゃごちゃしてて、彼にとってワクワクできる場所であるらしい、ということが、わかれば。

彼の姿勢に合わせた圧縮のフレーミングで、写真の中はぎゅっと構成要素が詰まったような、余白のない構成になっています。『狭い範囲の雑多感』という印象の演出の為ですが、被写界深度は浅めに設定し、ボケ味による遠近感や階調の変化をつけることで、彼自身の存在感に干渉し過ぎないようにしています。

前ボケもまた、少し大きめに被せることで、より『雑多な場所の、隙間から覗き込む感じ』に効果的に作用してくれました。

 

そして何より、お久し振りの『彼』ですが、天真爛漫で人懐っこい、その魅力はこの表情にあります。

1歳の時から彼を見てきた、その過程があるからこそ、彼は撮影者である私を認識してくれています。『笑顔のカメラ目線』を撮ることに、何の問題もない程度には。

彼がカメラを見るその眼差しには、『わたし』が『彼』とどんな関係を築いてきたかが、現れます。

 

構築した関係性に基づいた距離感で、私は彼と向き合う。

その人懐っこい笑顔が、レンズを通して私の視界に飛び込んで来た時、

「ああ、私は、彼に会いたかったんだなあ」と、改めて思いました。

その笑顔が、シンプルに嬉しい。君とこうして、『写真』を通して遊ぶような時間が、私は本当に楽しいんだってことを、改めて、知る。

 

 

彼がそこにいてくれることが、私はとても嬉しかったのです。

その『写真』という四角い範囲の中の構成要素のひとつひとつは、この新しい空間の為に自分たちで準備してきたもので、

そしてそれが、こうして1枚の写真の中で、彼の為の構成要素としてそこにあって、

『彼』がそこにいる、そのことでようやく、この空間は完成する。

 

 

新しい場所で、いつもの笑顔と。

自由を許容する余白のある空間は、可能性に満ちています。

 

 

 

 

 

 

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