店舗フォトジェニック集


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なみだのあとに。

投稿日:2021/2/20

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Photo&Write by Reiri Kuroki

Coordi by Naoko Naganuma

 

@AOYAMA

 

最近久し振りに、実にライフスタジオらしい時間を持つ機会がありました。

その名も『討論』。感じ、考え、整理し、言葉にし、客観を受け、自己を振り返る時間。ライフスタジオの会議の場では、これまでも度々討論を行ってきました。

私自身は、自分の感じ方や考えを展開したり言葉にしたりすることは嫌いではないのですが、如何せん『整理すること』や『客観を受けること』が致命的に苦手で、どうにも独りよがりになりがちなので、こういう時間は大切です。

日々カメラを持ち、いろんなご家族に出会い、撮影をさせてもらっているライフスタジオの撮影者たち。そんな撮影者たちと、ライフスタジオの写真がどう在るべきか討論する、という時間は、個人的にはとても楽しく、刺激的な時間でした。

気心知れた仲間たちと真剣に話していると、改めて、自分の軸となっている部分について、自分の撮影や写真について、再確認をさせてもらえます。

写真を撮ることを仕事にしてから10年が経ちますが、私にはゼロから創造するクリエイティビティはあまりありません。専門的な知識と確かな技術に基づいた緻密な表現設計をすることも、むしろ苦手かも知れません。『写真家』と言えるような、オリジナリティ溢れる作品のような写真を撮ることは、あんまりできない。

しかし、だからと言って毎日なんとなく同じような写真を撮り続けるような停滞は、受け入れ難いと思っています。私が撮っている被写体は、毎日毎回違う『ひと』だからです。

そして私には、ゼロから創るクリエイティビティや緻密な計算はありませんが、与えられたひとつの題材を起点に展開させる想像力や、ちょっと強過ぎる共感性はあるのです。

『ライフスタジオ』という空間でカメラを持つにあたり、それは私にとってたったひとつの武器でした。

私が撮らせてもらっているのは、この世にただひとりのその『ひと』であり、その家族であり、唯一無二のその人生のひと時を、思い出として美しく表現して記録する、という撮影です。

私はライフスタジオの撮影者として、そのひとの人生にとってきっとほんの一瞬の、わずかな2時間を美しく記録する。『あなた』という題材を戴いて、私は目の前の『あなた』を観察しながらその過去と未来を想像し、『あなた』に注がれる誰かの想いに共感し、そうして初めて、こう撮ってみよう、という設計が動き出します。

いつか、遠い未来の『あなた』の為に。あなたがあなたの為に、あるいはあなたの大切な人と一緒に思い出を振り返るその時の為に、私は写真を撮りたいと思っています。

 

 

この写真に関しては、私のそういう姿勢が如実に現れ、全てが決定された1枚でした。

3歳の七五三での、涙。ごまかしながら進めてきた撮影の真っ只中で、彼女が迎えた感情の爆発点。意思ある拒否を主張するその涙を見ながら、一瞬でいろんなことをぐるんぐるんと考えました。

ああ、こんなに泣いてて可哀想だしやめてあげたい…という心苦しさもありましたし、でも、一生に一度の3歳の七五三をちゃんと撮りきってあげたい、という使命感もありました。怯む彼女に寄り添いながら、パパさんママさんがここまでたくさん協力してくださっていましたし、私の隣ではコーディネーターのながちゃんが一生懸命に彼女と繋がり続けようとしてくれていました。

やめることもできたかも知れません。でも、ママさんから、彼女自身が撮影を本当に楽しみにして来てくれていたことを聞きました。ご挨拶もしてくれて、着物もドレスもウキウキで選んでくれて、ヘアメイクに怯えお化粧で持ち直し、どきどきしながらカメラの前に立ってくれて……一進一退を繰り返しながら彼女はとても頑張っていて、とても可愛くて、そんな彼女の葛藤や戸惑いを含んだごっちゃ混ぜの感情を凝縮したようなこの涙が、3歳の彼女というひとをとても、とてもよく表していました。

きっとこの泣き顔は、あなたとあなたを大切に想うひとたちにとって、愛しい記憶になる。そう信じて、私は泣き顔をクローズアップで撮ると決めました。

クローズアップは、被写体と撮影者の心理的距離が物理的にも反映される写真です。被写体が泣いてしまって撮影者が撮りあぐねている、という状況なら、こんなに踏み込むことはできません。しかし私は、もともと彼女が撮影を楽しみにして来てくれていたことを知り、彼女の頑張りと葛藤を目の前で見て、そこから溢れ出したこの感情を肯定的に受け止めていました。その涙は感情を物語る大きな要素で、それをしっかり写真の中で主張する為にも、物理的に寄ります。この時、私のその前進を阻む遠慮のようなものがなかったことが、私と彼女の心理的距離感、言うなれば関係性の反映でもありました。

七五三の撮影であることがわかるように着物や髪飾りの要素は最低限残しつつ、彼女の頬を伝う涙の存在感を損なわないくらいの露出設定で、涙を拭う幼い手を入れ込んで……私の接近を、泣くことに一所懸命だった彼女は気付いていなかったかも知れません。私は近付き、彼女はそこにいてくれました。それだけを許容してもらえれば、充分でした。

3歳のあなたが、精いっぱい頑張っている、その証。その記録がきっと、『泣きながらでも、頑張ってやりきった』という強い思い出になることを願って。

 

 

ライフスタジオは、写真館です。写真館という場所を、『美しさを表現し、思い出を記録する、楽しい遊びの空間』と定義している写真館です。

そこに属して写真を撮る私たちは、私は、その為にいつも悪戦苦闘と試行錯誤を繰り返しながら2時間を共に過ごし、最後にモニタールームでスライドショーを見る、ご家族のその横顔をドキドキしながら見守ります。

この遊びの空間での思い出が、美しく表現できているでしょうか?

その思い出の記録には、肯定的な感情が伴っているでしょうか?

照明を消した部屋で、パパさんママさんが写真を見ながら歓声を上げ、そっとその頬を涙が伝う時、私はようやくほっと息をつくことができます。

 

この仕事が、とても好きです。

ゼロから創造するクリエイティビティも、緻密な表現設計も私にはありません。しかし、『あなた』という存在を起点に展開する75カットのストーリーを、想像力と共感性を持って彩ることは、得意なのです。

 

いつか遠い未来の『あなた』を想像しながら、ここでの思い出がほんの少しでも、あなたの人生をより良く彩ってくれるものであって欲しいと願っています。

 

 

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美しさを表現し、思い出を記録する、楽しい遊びの空間

人生の写真館ライフスタジオという名前に込めた想い。
それは、出会う全ての人が生きている証を確認できる場所になること。
家族の絆とかけがえのない愛の形を実感できる場所として、
人を、人生を写しています。

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