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京都桂店
Butterfly 005: For N family 『写すとはどういうことかを実感させてくれた出会い』
投稿日:2019/10/13
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ライフスタジオに入社して早7年半が過ぎました。
私がこの世界に飛び込んだきっかけは、「人が撮りたいから」でした。
更に言えば、「人を撮るということを職業として生きていきたいから」でした。
実際に、この業界に入ってみると(今でもずっとそうですが)学ばなければいけないことばかりで、傲慢にも自分が知っていた「人」というのは実は1%も知らなかったのではないかという、固定観念を崩しては組み立ての連続の中に身を置いていました。そんな毎日なので、日々お客様には必死に向き合いながら、自分のいる場所を変えながら働いてきた記憶があります。そんながむしゃらで必死な毎日を過ごしていく中で、ありがたいことに私に指名をくださるお客様も増えてきました。
しかし、ライフスタジオにいて4年くらいは、私はカメラマンとしてお客様に必要とされているという実感はあまりなかったと思います。「写真」というカメラマンとしての純粋な結果物だけで、果たして私に誰かついてきてくれるのかという自信はそんなにありませんでした。カメラマンとしてプライドを持ちながら毎日撮影をしている以上は、「写真」で勝負したいという想いは常にありました。でも、私に勝負できるだけの実力があるのか。それだけが常に引っかかるところでもあったかもしれません。
そんな中、私にこう声をかけてくださるお客様がいました。
「正直、ライフスタジオはよくある写真スタジオだと思っていましたけど、写真が全然違うんですね。たくさん写真を見てきましたけど本当にびっくりしました。」
モニター終了後にそう声をかけてくださったのが Nファミリーのパパさんでした。
それから毎年私を指名してくださり、毎年お子様の成長を見守らせてくださるご家族です。
今でも覚えています。
あれは、暑い暑い真夏の日のことでした。
そのご家族との出会いは2016年の営業再開したばかりの越谷店。
カウンセリングであった印象は、パパさんと長女のお子様が「少し警戒されているかな」という印象でした。
その理由も撮影を始めるとすぐにわかりました。
妹ちゃんは恥ずかしがりながらも写真を撮られたい気持ちが伝わってきましたが、長女であるお姉ちゃんは、パパさんとママさん曰く人見知りで大の撮影嫌い。
パパさんは、そんなお姉ちゃんの様子を知っており、何度かほかのスタジオに行ったことがあるそうですが、なかなかお姉ちゃんに楽しい撮影を経験させてあげることができずにいたそうで、パパさんも「子供写真館はこんな感じか」と諦めの思いもあったそうです。
ライフスタジオも子供写真館のカテゴリーの中にありますので、初めはやや不信感の漂う中で撮影がスタートしました。
私がその撮影で意識したのは、とにかく「楽しい」と思って帰ってもらおうということと、「ライフスタジオらしい写真」を見せたいということでした。
ライフスタジオに来てくださった方はご存知かと思いますが、ライフスタジオのカメラマンもコーディネーターもとにかく撮影を盛り上げながら、そのご家族が楽しいと思えるような撮影空間を創り上げることに一生懸命になります。そのときは、当時新入社員だったたくみがお姉ちゃんの心を開こうと必死に頑張ってくれました。その甲斐があって、最初は目を合わせようともせず、返事もせず、私たちに笑顔を向けるなんてもってのほかだったお姉ちゃんが撮影の中で、たくみに向けて思わず笑顔を向けた瞬間がありました。
その瞬間に、空気がほころんだのを感じました。それはママさんとパパさんの少し驚きを含んだ感嘆の声があったからでした。私は、そこから「その子自身を写すこと」に集中できたことを覚えています。
「その子らしい、その家族らしい写真」というのが。「ライフスタジオの写真」の品質だと思います。だから、私たちはそのご家族の内面を「初めまして」の段階から会話や投げかけの連続中で零れ落ちる反応を情報としてかき集めて、「そのご家族らしさ」を探す旅に入ります。その旅に出る過程で、「人に深く入り、その空間でしか作れない関係性」を築き上げていきます。
そのための必須条件が、そのご家族に合う「楽しい遊びの空間」を創ることです。
その必須条件を、コーディネーターであるたくみが一生懸命になって作ってくれました。カメラマンである私はその空間を写真という結果物に残すことに専念しました。もちろんただシャッターを切るだけがカメラマンの仕事ではありません。
カメラマンである私は、被写体であるその人自身との関係性の適切な距離感を必要としています。コーディネーターが創ってくれた雰囲気の中で、私はお姉ちゃんとの会話をしていました。会話をしていくと、彼女は独特な雰囲気を持っていました。
「創った表情はしたくない、自分の心が赴かない表情をしたくない。」
「写すなら、そのままの私を綺麗に写してほしい」
「ほかの誰かと一緒にされたくない」
そんな彼女の意志が伝わってくるようでした。
いくつか会話をして、たくみに助けてもらいながら、彼女の意志から彼女らしさを写真にしていく過程で、いつしか彼女は自然に笑っていました。大人っぽく見えた彼女が、年相応に見えた瞬間でした。
すっかり和やかな空気になった後に、ご家族写真を撮った時には最初のカウンセリングの時に感じた印象とは正反対の無邪気な笑顔のNファミリーがそこにいました。
モニター中も感動してくださり、前述したお言葉をパパさんからいただきました。
そのときに感じたのは、純粋に「写真」を評価してくださっているのだけど、ただ単に「写真」と言う結果物だけでこういった評価をしてくださったわけではないということでした。
それは、いつも当たり前のようにやっている撮影の中の過程が、そのご家族の良い記憶になっていて、それが写真を通して確実なものになるのだということです。
そのためには、写真の質が伴っている必要があります。
そのことは理屈や言葉では知っていました。だけど、実感が不十分だったから「写真」だけで認められたいという欲求が出てきたのだと、反省しました。
それから毎年Nファミリーはライフスタジオの来てくださるようになり、私を指名してくださるようになりました。
妹ちゃんの入学のときは、お姉ちゃんが入学の時に撮影したのと同じワンピースを着て撮影をしました。そのときの写真がHPのギャラリーにも選出をされ、とても嬉しかったのを覚えています。そのことも、写真を撮る空間と写真の質の両立は、誰の目から見ても良い写真になるのだと確信を持てた出来事でした。
その撮影から、コーディネーターで入ってくれるようになったのは横浜青葉店のなっちゃんこと高川夏子さん。
妹ちゃんの七五三の撮影は、そのなっちゃんがいる横浜青葉店で行いました。
Nファミリーのお家から少し遠い青葉店でしたが、どこでも私たちの撮影を楽しんでくれて、そのたびに私は「質の良い写真は、良い空間と、良い関係性から」という基本原理を改めて実感するのです。
そして、今年。
なんとNファミリーに三人目のお子様が生まれてということで、うれしい驚きを抱きつつ所沢店の撮影を迎えました。
三人目は男の子で、まだ2か月ちょっとのbabyです。お姉ちゃん二人は、抱っこもしっかりしており、またご家族の関係性が変化しそうと私まで楽しみになりました。
そんなとき、ママさんから
「も~、工藤さんに撮ってもらいたいってずっと待っていたんですよ。やっぱり我が家は工藤さんじゃないとね。」
実はNファミリーにお会いしたのはお久しぶりでした。少し長めのスパンの撮影になってしまったので、もしかしてお姉ちゃんがお年頃で撮影に来るのが嫌になる年齢になってしまったんじゃないか、少し不安になっていました。
ご予約の連絡をいただいたときに、三人目のお子様がお生れになったのを聞いてスパンが開いた謎が解けたのですが、ママさんから「待っていた」という言葉と。「我が家は工藤さんじゃないと」という言葉に、嬉しすぎてビックリしてすぐにはリアクションできずにいました。
そのときにやっと、自分が築いてきた関係性が独り善がりではないという想いが確証に変わりました。
(遅いですよね、撮影5回目にして…)
だからその撮影も、「質の良い写真は、良い空間と、良い関係性から」ということを頭の中で反芻させながら、今回はいつもよりも心にじんわりと温かいものが広がるような感覚の中で撮影をしていました。
ご家族と、お姉ちゃん、妹ちゃん、そして今回は弟君も。
変化しながら、変化を楽しみながら、そのご家族に合った撮影を、写真を、常に考えながら、そうして写真と記憶は生まれていくんだなって、そんなことを考えながら撮影をしていました。
モニター後にママさんからお姉ちゃんがまたモデルスイッチが入ってましたねと、ニンマリしながら嬉しそうに仰っていただき、また来年も頑張ろうと強く思えることができました。
写真を撮るという行為の本質を、Nファミリーの撮影ではいつも実感させていただいています。
カメラマンとして大切な、謙虚で誠実な姿勢を忘れないでいさせてくれるNファミリーは、いつも『写すということがどういうことなのかを実感』させてくれます。
「写す」ということは、ただの結果物ではなく、家庭と関係性と、私の姿勢がいつも現れるものだから、たからアンテナは敏感に、視点は深く、そしていつも挑戦の気持ちを忘れずに。それを毎日積み重ねていくこと。それがライフスタジオの撮影であり、ライフスタジオの写真になっていく。
当たり前だけど、忘れてはいけないこと、
いつも教えていただいています。
最初の出会いから、今まで繋いできた記憶も、変化していく関係性も、全てが繋がってこの時間と写真がある。
来年は、またどんな撮影ができるだろうか、なんて今から楽しみにしながら、Nファミリーの連絡を待つのです。
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