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京都桂店
usual but unusual
投稿日:2017/4/30
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いつもだけど、いつもとちがう。
いつものように見える日常の景色は、本当は存在なんてしていないってこと。
列車に乗ったときに見える流れる車窓のように、同じ用で同じものはない。
本当は知ってるけれど、気付かないふりをしていたってこと。
いつの間にか忘れていたよ。
春の終わりに、夏の初まり。
花は散り、緑は深く、空は近くに。
日差しがジリジリと刺し、少しずつ汗ばむ肌に、
気持ち良く触れる風は爽やか。
そんな季節。
いつも、毎年、彼はいる。
ずっとずっと、私たちの近くにいたような彼。
4年前、私が最初にいた店舗が閉店になると知った彼は、お家のお風呂でこう言って泣いていたそうだ。
「親しくなったら、いつかはお別れしなくちゃいけない。」
そんな寂しくも、綺麗な言葉を発した彼の心が、本当に純粋で、現実的で、美しいと私は感じた。
その美しさは、瞳の美しさにも現れる。
透明感のある、色素が薄い彼の瞳は、出会ったときから吸い込まれそうで、端々に現れる綺麗な心とともに、彼自身の存在が本当に美しいといつも感じる。
結局は、お別れはしないで済み、今もこうして毎年初夏の奔りには会う仲なわけで。
でもそれは、現実を粛々と受け止めながらも、健気に少しでも一緒にいてくれようとして、距離が遠くなっても諦めずに、こうして今も会いに来てくれる彼の熱意の結晶のおかげなわけで。
真っ直ぐに、きらきらと、私たちへ向かう気持ちが、
純粋で透き通って見える。
そんな澄んだ心の持ち主は、いつも同じように私たちに会いに来てくれるたび嬉しそうにしている。
身体は大きくなっても、相変わらずだね。
なんて、そんな言葉がいつも出るけれど、本当は相変わらずなんてないことに気付いてる。
身体の大きさも声も変わり、それとともに心も少しずつ変わっていくことを、私は気付いてる。
だけど、相変わらずだねなんて裏腹な言葉が出てくるのは、どんどん変化していく彼に留まっていて欲しいからか。
それとも、先を走る彼に私が置いていかれることが怖いのか。
私が彼の変化を無意識に留まってほしいと願っても、時の流れと彼の心と身体は変化していく。
いつもなんて、本当はない。
相変わらずなんて、幻想だ。
だから、私も彼に真っ直ぐに向き合い、
歩みを進める勇気を出そうと思った。
変わっているからと言って、別人になるわけではない彼。
いつもの延長線上に在る、いつもじゃない現実。
日常の中の中にある、非日常。
何の変哲も無い、変化。
それが、人生を生きるということならば、
そんな彼の現実を写真に表すには、
気を衒うことじゃなくて、
無理やり曲げることじゃなくて、
今ある事実を、写真の撮り手である私が解釈して、もう一度組み立てること。
それが必要なんだ、と思った。
ここは青葉店。
彼の中のいつも。
それを象徴するカフェの棚。
その中で、すっかり大きな身体になった彼は、
いつもと同じようでどこか違う。
瞳の美しさも、心の美しさもそのままに、
だけど、そのままじゃない。
力強く、凛とする。
少年から青年へ。
棚に寄りかからせ、力を抜いてもらう。
カメラを構えて、私を撮るように指示をしたのは、
写真にしたときに、彼が彼自身を撮るように見せるため。
いつもの場所の、いつもの姿勢。
だけど、いつもになり得ない現実の真実は、
前へと走り出した彼の未来。
それを私が受け取って、彼のいつもを崩してまた組み立てる。
そうして創られた写真には、今の彼の真実が写るような気がして。
写真を見ると、いつもの彼のように見えて、全然違う彼が写る。
彼は一体誰だろう?
そんな錯覚を覚えながら撮影をして、彼自身を探す。
そして、また彼を見つける。
撮影のあと、誕生日プレゼントのケーキを頬張りながら学校の話をしている彼がいつも通りすぎて、笑いながら拍子抜けしちゃうんだけどさ。
変わらないものはない、なんて言っておきながら、
それでも変わらないものを信じてるどうしようもない私は、また来年もその先も彼が来てくれることを心待ちにしている。
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