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京都桂店
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投稿日:2017/4/5
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Photo: Satsuki Kudo
Coordinate & HairMake: Kaori Sasaki
その日のことを思い浮かべると、
まるで奇跡のようで、
まるで幻想のようで。
それは彼女の名前を知っていたからかもしれない。
10歳の彼女は、普通の10歳のあどけなさと、
それだけではないような面持ちを浮かべてそこにいた。
10歳の記念。
彼女はあと10年で大人になる。
今まで過ごしてきた幼さを背に乗せ、眼差しはこれからを見つめるように前を向く。
話してみるとまだこどもで、だけど確実に大人になりゆく彼女を見ていると、
いったい何が彼女なのかわからなくなる。
見た目の美しさのみを見ていると、すぐつかめるのかもしれない。
だけど、深く入るとたくさんの要素が混在していて、
静かに佇む彼女の周りには、私という小ささでは測れないような何かがあった。
ふと彼女のお母さんから口紅を使って撮影をしてほしいと言われた。
喜んで、口紅を手に取り、彼女の口元に当ててもらった。
金色だった。
その日のことを思い浮かべると、出てくるのは金色。
それはとてもあたたかな色で。
大陽から手が伸びて、頬を優しくなでるような金色。
まるでずっと彼女を見守っていたかのような。
零れるような金色。
滲むような金色。
それは誰かの目線なのか。
感情が滲む。
あぁ、この視点は母親のもの。
この金色も、ただの偶然ではなく、私がどこかで彼女のお母さんの話を聞きながら、
今ここにあるすべての美しいものが、母親の抱く感情を滲ませているように感じていた。
彼女を生まれたときから知っている母親の視点。
私はこの場でしか知らないから、彼女の大きさがわからなかったけれど、
お母さんは、誰よりも彼女の成長を、今ここでこうしている理由を知っている。
その金色に、私が母親の気持ちを通して、彼女の存在を預けてみる。
身体の大きさは変わる。
顔つきも、佇まいも変わるかもしれない。
それは寂しくなるかもしれない。
だけどね、10年経っても、20年経っても、彼女は彼女のままで。
違う人になるわけじゃない。
過去と今と未来。
それを繋げる象徴としての口紅と、
その口紅を塗った口元。
敢えて口だけを写すことで、今とこれからを滲ませる。
いつ見ても、あなたであることを感じるように。
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