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京都桂店
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あね。-たしかにそこに在るもの―
投稿日:2017/3/1
957 2
Tokorozawa Photo
Photo: Satsuki Kudo
Coordinate: Kaori Kinoshita
目に見えるものがすべてではない。
その中に、在るものとは本当は何か。
でも、その中に在るものは目を通してしか見えないから。
私が感じるものを、できるだけ正確にその四角の中に詰めたいと思ってしまうのです。
心の中は複雑だ。
笑っていても、心はどこか少し寂しいし。
強がっていても、本当は少し頼りたくて。
だけど、その人が望む方向に生きていきたいから、表面的には凛として見えるけれど、いつも揺れる心の中は、誰にも知られないし自分も語らない。
それは確かにそこに在るのに。
私が人を美しいと思う瞬間は、「心の動き」が見えた時かもしれない。
人は本心を悟られまいと隠すものだけど、その氷のような壁が溶けた瞬間に私は少し安心する。
その人の本心にやっと触れられた気がするから。
飽きやすい私がなぜ長く写真を続けられているかというと、ただ技術を極めたいわけではなく、自己顕示欲も今もほんの少しはあるかもしれないけれど、それが目的なわけでもなく、ただ人と繋がって触れて安心したいからなのかもしれない。
私の話を少しすると、私はぶっきらぼうだけど寂しがり屋だ。
だから、誰かに気に入られるために表面的に柔らかくなったり優しくしたりすることは苦手なくせに、一人だと心に穴が開いたように寂しく感じる。
だから写真を撮る。それは私が人になるべく近くに触れられる手段だ。
揺れ動く何か。
それは彼女にも感じた。
朝の陽ざしがまぶしい午前9時。
彼女たちと出会った。
姉妹だった。
妹は人懐っこい笑顔を向けて少し遠慮がちに佇み、姉である彼女は凛としてそこに立ち、まるでそこにいる誰にも意に介さないような堂々としたいで立ちを見せていた。
妹が「お姉ちゃん可愛い」とキャッキャとはしゃぎながら、彼女のヘアメイクを見ているのに対し、とてもクールで女優のように優雅な彼女は少し気だるそうにヘアメイクを受けていた。
話してみると、クールな印象とは裏腹にさばさばとした元気な言葉。
女の子が好きそうなかわいらしいものについての話題よりは、面白い冗談が混じる会話の方が好きなようだ。
ぎゃははと口を大きく開けて笑う姿は、妹が彼女に抱く「女子としての憧れ」など彼女は知ったことではないように見えた。
だけど、話が途切れた時に見せる瞳はどこか切なげなもので。
揺れ動く心が見える。
私にはそう見えたから、彼女の氷が少し溶けたような気がした。
強がっていても、凛としたように見えても、彼女の中の彼女はもっと柔らかく、温かく、優しさが滲んでいたように見えた。
着物に着替えた彼女は美しかった。
ポーズの指示も難なく聞けて、堂々した佇まいからは照れるとか自身のなさはみじんも感じなかった。
まるで彼女は自分自身が美しいということを知っているかのように。
末広を口元に当てるように指示をし、斜め上を見てもらいながら、少し話をした。
「何している時が一番楽しい?」
他愛もない質問だった。だけど、少しだけ彼女の表情が変わったように見えた。
「何も」
一見寂しい答えだと思った。だけど答えた彼女の目が少しだけ切なそうに見えた。
もしかしたら、彼女は凛として堂々として自分を見せていたのは誰にも本心を悟られないからかもしれないな。
お姉ちゃんだから、我慢しなきゃいけない場面も多いだろうし、
妹から憧れの対象として見られていることも、知らないふりをしているだけで本当は知っていて、その憧れの姉の姿を崩すまいとしているのかもしれない。
だけど、本当は彼女も自身の心に忠実に自由に楽しみたいだろうし、誰かに期待されている自分を演じたくないときもあるのかもしれない。
だけどそんな自分の姿を崩さないのは、家族への、妹への優しさなのかもしれないな。
なんて自分勝手にそう想った。
彼女の切なくも優しい心情が出たその瞬間を、彼女らしい美しさで表現するには。
いつもは見えない彼女自身が見えた瞬間に、彼女自身の誰にも見せまいとする一面を表現するには。
優しい光がいいと思った。
色はあたたかな暖色系。
窓から淡く緑が見えるように。
逆光で、彼女の瞳と鼻筋の輪郭を浮かび上がらせ、
そしてうなじから流れる後れ毛に光を透かすように。
フレーミングは、流れて動く心を表す横のクローズアップ。
口元に末広を当てることで、彼女が本心を隠していることを表すように。
そうして構成された四角の中に、彼女のことを複雑だけど優しい存在として表す。
揺れ動く心の隙間に、彼女の体温を感じて。
彼女自身の優しさを感じて。
まるで早めの春風のように、本当は優しくあたたかな彼女がそこにいる。
Photo: Satsuki Kudo
Coordinate: Kaori Kinoshita
目に見えるものがすべてではない。
その中に、在るものとは本当は何か。
でも、その中に在るものは目を通してしか見えないから。
私が感じるものを、できるだけ正確にその四角の中に詰めたいと思ってしまうのです。
心の中は複雑だ。
笑っていても、心はどこか少し寂しいし。
強がっていても、本当は少し頼りたくて。
だけど、その人が望む方向に生きていきたいから、表面的には凛として見えるけれど、いつも揺れる心の中は、誰にも知られないし自分も語らない。
それは確かにそこに在るのに。
私が人を美しいと思う瞬間は、「心の動き」が見えた時かもしれない。
人は本心を悟られまいと隠すものだけど、その氷のような壁が溶けた瞬間に私は少し安心する。
その人の本心にやっと触れられた気がするから。
飽きやすい私がなぜ長く写真を続けられているかというと、ただ技術を極めたいわけではなく、自己顕示欲も今もほんの少しはあるかもしれないけれど、それが目的なわけでもなく、ただ人と繋がって触れて安心したいからなのかもしれない。
私の話を少しすると、私はぶっきらぼうだけど寂しがり屋だ。
だから、誰かに気に入られるために表面的に柔らかくなったり優しくしたりすることは苦手なくせに、一人だと心に穴が開いたように寂しく感じる。
だから写真を撮る。それは私が人になるべく近くに触れられる手段だ。
揺れ動く何か。
それは彼女にも感じた。
朝の陽ざしがまぶしい午前9時。
彼女たちと出会った。
姉妹だった。
妹は人懐っこい笑顔を向けて少し遠慮がちに佇み、姉である彼女は凛としてそこに立ち、まるでそこにいる誰にも意に介さないような堂々としたいで立ちを見せていた。
妹が「お姉ちゃん可愛い」とキャッキャとはしゃぎながら、彼女のヘアメイクを見ているのに対し、とてもクールで女優のように優雅な彼女は少し気だるそうにヘアメイクを受けていた。
話してみると、クールな印象とは裏腹にさばさばとした元気な言葉。
女の子が好きそうなかわいらしいものについての話題よりは、面白い冗談が混じる会話の方が好きなようだ。
ぎゃははと口を大きく開けて笑う姿は、妹が彼女に抱く「女子としての憧れ」など彼女は知ったことではないように見えた。
だけど、話が途切れた時に見せる瞳はどこか切なげなもので。
揺れ動く心が見える。
私にはそう見えたから、彼女の氷が少し溶けたような気がした。
強がっていても、凛としたように見えても、彼女の中の彼女はもっと柔らかく、温かく、優しさが滲んでいたように見えた。
着物に着替えた彼女は美しかった。
ポーズの指示も難なく聞けて、堂々した佇まいからは照れるとか自身のなさはみじんも感じなかった。
まるで彼女は自分自身が美しいということを知っているかのように。
末広を口元に当てるように指示をし、斜め上を見てもらいながら、少し話をした。
「何している時が一番楽しい?」
他愛もない質問だった。だけど、少しだけ彼女の表情が変わったように見えた。
「何も」
一見寂しい答えだと思った。だけど答えた彼女の目が少しだけ切なそうに見えた。
もしかしたら、彼女は凛として堂々として自分を見せていたのは誰にも本心を悟られないからかもしれないな。
お姉ちゃんだから、我慢しなきゃいけない場面も多いだろうし、
妹から憧れの対象として見られていることも、知らないふりをしているだけで本当は知っていて、その憧れの姉の姿を崩すまいとしているのかもしれない。
だけど、本当は彼女も自身の心に忠実に自由に楽しみたいだろうし、誰かに期待されている自分を演じたくないときもあるのかもしれない。
だけどそんな自分の姿を崩さないのは、家族への、妹への優しさなのかもしれないな。
なんて自分勝手にそう想った。
彼女の切なくも優しい心情が出たその瞬間を、彼女らしい美しさで表現するには。
いつもは見えない彼女自身が見えた瞬間に、彼女自身の誰にも見せまいとする一面を表現するには。
優しい光がいいと思った。
色はあたたかな暖色系。
窓から淡く緑が見えるように。
逆光で、彼女の瞳と鼻筋の輪郭を浮かび上がらせ、
そしてうなじから流れる後れ毛に光を透かすように。
フレーミングは、流れて動く心を表す横のクローズアップ。
口元に末広を当てることで、彼女が本心を隠していることを表すように。
そうして構成された四角の中に、彼女のことを複雑だけど優しい存在として表す。
揺れ動く心の隙間に、彼女の体温を感じて。
彼女自身の優しさを感じて。
まるで早めの春風のように、本当は優しくあたたかな彼女がそこにいる。
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