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不自由な経済 仕官学校25

投稿日:2012/6/29

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不自由な経済

著者:松井彰彦

Center:蒔田高徳

 今月私がテーマにしているのは「自由」という言葉だ。図書館で自由という言葉でつながる本を探していたら、不自由という言葉でこの本が出てきた。タイトルからも連想するのは、幾分、日本という便利で過ごしやすく安全な国で自由でありながらも、「不自由な経済」を感じるという面では、一般庶民はある程度共感してしまうのだろう。タイトルに惹かれて本を手にしてしまうのだから、本のタイトルをつける時はとても重要だ。

 経済情勢が変化するたびに経済や市場に対する人々の考えが180度変わる。それでは未来をつくることはできないという著者の漠然とした想いがあった。そもそも規制緩和一辺倒で市場経済を創るという考えは経済学界では1990年代にはすでに過去のものとなっていたそうだが、ゲーム理論を核に据えた情報の経済学や組織の経済学の進展によって、市場に任せておけば神の見えざるてによって経済が望ましい方向へ調整されるという素朴な市場観では通用しなくなっている。また、市場のルールの大切さも指摘され、参入規制などあらかじめ企業の手足を縛るような事前規制から反則を犯したら罰則を与える事後規制への流れが必要だとの認識がなされた。以前読んだ「レクサスとオリーブの木」でも、先にシステムが出来上がり、ルールがそれに追いつかないなどの市場の違和感をこの本の指摘でも感じるように、私たちの現場でも、オリーブの木がどこにあるのかという部分はいつも気にしていかなければいけないと思い出す。

 市場は万能ではないが、市場を拒むことは、不自由な経済を作ることになる。それは人と人とのつながりを断ち切ることに他ならない。「人と人とをつなげる市場」でなければならない。そういった面で私たちも、「市場を考える」視点を持たなければならないだろう。

先月、韓国に会社の研修として2泊3日で行って来たが、韓国の発展している経済も、どこか日本と変わりなくチェーン店舗の風、大企業、大資本の浸食があるなと感じた。昔ながらの小さな販売店、飲食店、それらの集合体だった市場も昔と少し風景が変わってきている。私が興味を示したのは南大門市場の光景だった。出来ればこのまま、あまりこの風景は変わらないでほしいなと感じたのだった。レジでもない、マニュアルでもない、人と人が繋がっている市場の魅力を感じたのだ。

 人は一人では生きられない

それがコミュニティであり、また人が市場を形成する理由ではないかと考える。誰かの利益の為に一部の人たちが犠牲になっても構わないのが市場の本来の原理ではないはずだ。顔の見える関係から、顔の見えない関係まで、さまざまなつながりを読み解く学問こそが、経済学だ。私たちの多くは、つながりを意識しないまま、日常生活を送っている。2008年のリーマンショック移行、それまでの格差議論と相まって、市場の役割を疑問視する声が大きくなった。また、政権交代を経て、またインターネットメディアの活性化から、私たちの声が政策にも反映されるようにもなってきた今、一人ひとりの意見や判断が以前にも増して大切なものとなっている。そのようなときだからこそ、人と人をつなぐ市場の本来の役割を見据える必要がある。

 

  市場の条件  厚生経済学の基本定理

理想的な競争市場の下では効率的な資源の配分が達成される

 

問題点1 理想的な競争市場は存在しない

→参加者が合理的で他人を妬まず、独占も公共財も外部性も情報の偏りもなく、価格が円滑に動いて売り買いを調整するような市場

問題点2 

あくまでも効率的な資源の配分であり、公平性への留意はない。

「効率的な」状態というのは、その状態から誰かの満足度を上げようとすれば、他の誰かの満足度を下げざるを得ない、という状態のことであり、経済学ではこの概念の提唱者の名前をとってパレート効率性と呼ばれる。この効率性の概念は公平性の観点を含まない弱い概念であるため、パレート効率的な状態だからといって、社会的に望ましい状態であるとは限らない。

 

私たちは一人ひとりが市場の中でつながり合って自立している。昔に比べて女性が自由を感じているとすれば、それは女性に閉ざされていた市場が開放された結果だ。障害者の自立も市場への参加が可能になることによって進んでいく。市場は万能ではない。だからといって市場を縛るをだけをするのは、不自由な経済を作る。私たちの社会はこれまで女性には危険だから、傷害者には無理といって、参加者をえり分け、市場を縛ってきた。だが少子高齢化も進みその余裕もない。今後は、どのようにすれば人々が市場に参加できるようになるかという視点を持ち、互いを排除するのではなく認めあう社会への構築へ向けた取り組みが必要だ。

わたしたちの社会を思うときに、いつでも複数の可能性があるが、真実はみんなの意見で作られてしまうのだ。私たちが作る真実をその時の真実と定義してしまっただけで、本当の真実かどうかはわからない。市場は本来決して格差を生む源泉ではなく、逆に格差を縮める力を持っているのではないか。市場は見知らぬ人同士をつなげる場であり、自由を生み、仲間内の馴れ合いや既得権益を打破し、経済社会に新しい息吹を与えるのも市場の役割だろう。だとするなら、私たちは「市場の原理」を「本来の市場の原理」としてもっと深く知らなければならない。

著者の視点の広さと、また自分が今まで本を読んで学んできたことが、少しずつつながり整理されるようだ。その中に、「自由」と相反する「規制」という言葉が見えてきた。そしてやはり、「自立」と「自律」と言う言葉が出て来る。不自由な経済を見ながらも、自由とは何かをもっと知りたい。

 

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