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越谷店
フィンランド流、社長も社員も6時に帰る仕事術 静岡P100
投稿日:2012/5/31
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フィンランド流、社長も社員も6時に帰る仕事術
田中健彦
Center:蒔田高徳
この本はフィンランドいいなぁと思うことがテーマではない。いかに、私たちの現場でもし、何かそれは良いと思うものがあるならば積極的に取り入れる方法、手段を探すことだ。そして、人生の目的を見出して、その手段を明確にしながら働いているワーキングスタイルが、私たち周辺の日本人の常識で考えるのではなく、視野を広げることにある。
著者の海外在住のエピソードは貴重だ。フィンランドに転勤したばかりの頃、ある会議に参加していたとき、社長の携帯電話が鳴った。アラームをセットしてあったらしい。午後3時だ。社長は「時間が来たので失礼する」と言って、腰を上げた。著者は「きっと次の会議があるのだろう」と思った。だが、次の言葉にあっけに取られた。
「息子をサッカークラブに送っていかなければならないのでね」
他の幹部たちも驚く風もない。それどころか、彼らも、また一般社員も、4時過ぎにはどんどん帰宅を始めてしまうのだ。6時には誰も残っていない。私たち日本の現場では6時だと決めたら、6時ぎりぎりまでは、仕事が無くてもなぜか残っているが。
「フィンランドだから6時に帰れるのでは?」と思ってはいけない。日本人もその気になれば6時に帰れる。もちろん帰るだけでなく、結果をきちんと出し、それを続けることができる。これが著者がフィンランドをはじめ欧米に長く滞在した経験からの確信だ。
仰天することは、他にもある。7月になると社員は次々に夏休みを取り始め、7月下旬には会社の中はガラーンと人がいなくなってしまった。だが、他の欧州の会社もみんな同じで、激しい企業間競争も一時停戦という状態。社員たちは1ヶ月以上、家族そろってこの最高の季節を別荘や自宅でのんびりと過ごすのだ。こんなことで会社は、この国は、そして欧州全体は厳しい競争を戦っていけるのだろうか?
ところが、驚くべきことに、国際的な調査機関が発表する各種の国際競争力では、フィンランドをはじめとする北欧諸国は、いずれもランキングの上位を独占している。
各企業も、NOKIA、IKEA、H&Mなど北欧系は元気がよい。
日本はGDP、すなわち経済の体重を示す指標では世界2位なのに、健康度を示す国際競争力となると9位、フィンランドは6位だ。国の成長に欠かせない教育の面でも、かつて日本はトップにいたのに、最近は下がってランキングは総合で10位、一方フィンランドは世界1位をずっと維持していた。
職場環境を見てみると、日本は疲れて帰宅すると、子供たちはもう寝ている。おかげでお母さんは母子家庭のように、家事と子育てを引き受けざるをえない。せっかく欧州なみに夫婦共働きが定着しても、帰宅時間が昔のままだから、まったくちぐはぐだ。これでは夫婦や親子の関係がおかしくなってしまうのも無理はない。
6時に帰宅できる方法は本当にないのだろうか?
「何があっても6時に帰ると決める」
著者が1年半ほど駐在していたフィンランドでは午後3時になると、社員はそろそろ帰宅し始め、夕方5時半になると、ほとんどの社員は職場からいなくなった。しかも、年間で30日間の有給休暇は、その年の内に100%使い切ることが義務付けられていた。さらに、病気で医者に行くのには、有給休暇ではなくて、病気休暇を取ることができる・・・。これはフィンランドだけでなく、欧州のほとんどの国でも同じだと言う。
日本のお父さんが遅く帰宅して、子供はもう寝てしまっていて、学校のことや、クラブの話もきいてやれない。友人の名前すら知らない。子供の寝顔しか見られないなんて考えてみたら、なんてこの国は不幸なことか。
「6時に帰るは上司の命令より絶対」
職場のみんなが早く帰宅する、ということの重要性を見直し、本当の「豊かさ」とは何かを考えなければならない。
集中力がアップする職場環境を工夫する。
アイデアが生まれる仕組みを作る
フィンランドに限らないが欧州の会社には「ネットワーキング・スペース」という概念がある。これは他部門の人たちが自然に集まる場所のことを指していて、社内のリフレッシュルームとか、ラウンジなどのスペースに自由に集まって、アイデアや情報を交換し、人と人とのネットワークを作る場所のことだ。こうしたマインドとやり方が仕事の効率化を促しているし、また職場がいつもリラックスした雰囲気に満ちている理由だろう。
私たちの会社には食堂があるが、公共の場所にしては、食事のあるところで平気でタバコを吸うし、灰皿はいつも食卓の上に置いてあり、さすがに食事を食べるときはそういう人は見ないが、普段その空間に入った瞬間から既にあまり気分のよい状態ではない。会議室に至っては最悪の空間になってしまっている。そこに、公共性と自分たちのマナー、ルールをしっかりと語らなければいけない。結局のところ、そういった空間を避けて事務所に戻るのである。より快適な空間をつくることができたなら、そこはネットワーキング・スペースとなるのだろうか。私はコーヒーを飲まないからわからないが、そういった公共性のある空間を作ることは大事だ。
私自身が、あまり礼儀正しくは無いが、たばこのマナーのない人間には何を言われてもお互い様としか思わなくなってしまう悪循環がある。私たちの会社ではもっと公共性を高めていくべきだろう。そうでなければ、マナーも礼儀も、配慮も、人が人を人としても何も言えないだろう。このネットワーキング・スペースという空間が、私たちが今後展開する店舗でも良く形成できればいいと思う。人が人を人として。
無駄な残業をさせられない理由
残業手当は、通常よりもずっと高くなってしまうので、上司としても、めったに残業はさせられない。フィンランドでは、独身者などで、残業を多くしてしまう人はいないのか。まれにそういう人もいるが、周囲が勝手にさせておくだけで、個人の自由に任せるそうだ。社員がそれぞれの趣味を大切にしているから、仕事だけが趣味という人はほとんどいないという。フィンランドでは組織がフラットで、上下の意識が非常に薄い。有名なフィンランドの会社、ノキアは世界最大の携帯電話会社で、従業員数は5万人だ。そのトップに立つヨルマ・オリラ会長は、海外出張のときにも、エコノミークラスを使うという。会社から権威主義を排するのは、フィンランドの流儀だ。男女平等も極めて平等だ。女性の国会議員の比率が40%で世界7位、日本は11%で世界で97位だ。女性の働きやすさを測定するGEM指数の国際比較によると、フィンランドが3位で、日本は57位だ。
職場に進出し、管理職になる女性がそれだけこの国では多い。
ITフル活用
無駄な会議をITで代用。社内情報インターネットで。日本の会議は無駄な会議に出席しすぎて、効率を落としている。
会議は全て無駄とは言えないが、
フィンランドなどでの欧米では、発言の機会のない会議には出席しない。これはルールとして定めるなら、日本でもおもしろいかもしれない。あまりにも、いても意味のない人もいるではないか。発言しないなら、いないほうが楽だろうに。発言の機会を与えるのが役割ではなく、自分の発言を準備したり、質問することが人それぞれの役割だと思う。
日本人は発言をしない人が本当に多い。欧米諸国は、質問や発言をすることが学校教育で大きな評価となる。文化的な差異はあるにせよ。発言の機会のない会議には出席しないというこの思い切りの文化は面白いと思う。
たくさん興味深い事例がたくさんある本だが、これをただ文化の差だとするのは、違う。
人間を尊重するなら、働き方を尊重しなければならないし、働いている人の家族に対しても尊重しなければならない。日本はGDPという指標に惑わされていけない。それは単に経済の大きさを示しているだけで、本当の豊かさとは別だ。日本の社会は、ここまで急激に成長していくる過程で、女性の社会進出、少子化、高齢化といった変化に、準備ができないまま、大きなゆがみを作ってしまった。6時で帰宅することがどれだけ大事かも気づかないまま、これが当たり前という常識を作ってしまった。そのことに気づいて、働き方を大きく変えていけば、日本は本当の意味でもっとずっと「豊か」になれるはずだ。その働き方は、会社の私たち一人ひとりのマインドの持ち方だけで大きく変化させることができる。
私たち一人ひとりが、社会をよりよくできる手段をもっと探してみよう。
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