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カオスの紡ぐ夢の中で 静岡P56

投稿日:2012/3/13

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カオスの紡ぐ夢の中で

著者:金子邦彦

Center:蒔田高徳

 図書館の返却コーナーでこれを見つけた。タイトルに惹かれたのだ。以前読んだ本で、カオスという言葉を自分のものにした。カオスの対義語は秩序〔コスモス〕だ。自分の職場やあらゆる環境、会議、現場で私の目は「今はカオスだ、お、いいぞコスモスに向かおうとしている」などと頭の中で考えている。そしてカオスの状態からいかにコスモスに向かうべきか、それにはシステムが必要か、整理が必要か、意見か行動か例が必要か頭の中はそんなことを考えながらカオスなのであるが、カオスをいかにコスモスに?と頭の中で考えるようになった。

 この本は複雑系研究の第一人者が科学研究の本質と最前線を、多彩な表現方式を駆使して説く解説の本だ。最初はエッセイかと思えば、途中から小説になる。科学者、研究者であるゆえに、ものの見方の表現は幅広く視野が広い。

 イチローのホメオカオス打法?という文章があったが、某テレビ番組にイチローが出演していた時に「振り子打法という呼び方は納得できない、もっといい呼び方をつけてくれないだろうか」と言ったそうだ。彼の発言をまとめれば、自分の打法は振り子のように左右対称で、繰り返しのようなものではなく、もっとダイナミックに変化しながら打っているのだということだ。振り子の運動は力学では最初に習うのだそうだ。これは「時計」に使われるように完全な周期運動をする。足をぶらぶらさせるのが一見振り子に近いことから、この名前が出たのだろう。

 ところが、普段我々は、力学で教わる振り子のような繰り返し運動ではなく、もっと複雑な運動を目にしているのだ。足を振り子として単純化するとしても、膝があるから膝までの振り子とそこから下の振り子の二つの要素から成る「二重振り子」となる。力学の問題としては一組余分な変数が増えただけで大した違いはないように見えるが、この二重振り子の運動は「カオス」と呼ばれるような、繰り返しでは書けないものになってしまう。右に回ったり、左に回ったりとするといった、多様な運動が示す不規則なものになり、一つの振り子の振る舞いとは質的に異なっているのだ。こうして見ると、イチローの意見は正しいのだ。イチローは科学者ではないが、自身の身体、そして心の状態を絶えず研究している研究者であると言える。その振り子打法と呼ばれた事に関する自身が感じた表現の違和感を具体的に自分で説明はできないにしても、違うと言えるのは、常に自分の状態と向き合っているものが言えるのだろう。私も最近になって豚と呼ばれることがあるが、自身の生活の状態が怠惰であればその言葉を「はいはい、そうですね」と認める部分があるかもしれない。自身がそうでなく自身のエネルギーから動き出している状態では、そこで体が現在太っていたとしてもその言葉に違和感を感じる。その言葉の表現は適切ではないと思うからだろう。それにしても豚という言葉は早く卒業した方がよさそうだ。

 

 カオスは、不規則で不安定な運動である。はじめの値を少しずらすだけで、その後の軌道の差はどんどん増加してしまう。その一方でカオスにおいては一つの発展規則から多様な運動パターンが生成される。先ほどの二重振り子ではそれぞれが続けて右回転したかと思うと、左回転し、といった多様な運動の組み合わせが出てくる。つまり、一つの振り子だけでは決まった運動しかできないのに、カオスがあれば様々な状況にその多様な運動パターンで対応できる可能性があるのだ。

 可能性という言葉は好きだ。そしてカオスとコスモスは矛盾した言葉ではなく、サルトルの知識人の擁護からもあったように、矛盾とは新たなエネルギーを生む可能性、需要を持っている。カオスの中にこそまた、可能性があるのだ。だから、イチローは振り子打法という規則的なものと言うよりも、常に変化に対応する不規則な可能性だと言いたかったのではないかと考える。だから常に変化し、変化に対応しているのだ。

 

百人寄れば○○の知恵?

有名な諺で「三人寄れば文殊の知恵」という言葉がある。特別に頭の良い者でなくても三人集まって相談すれば何か良い知恵が浮かぶものだ、という意味だが、これがもっと多い集団になってもそれが適用されるかどうかは、その話す形式を考えなければならないと思う。店長会議などは今人数が多いのであるが、一般にどんな会議でもある一定の人数を超えると、一部の発言者とサイレントマジョリティーへの分化過程が起こるように思う。人数の多い会議のカオスをコスモス化するには、会議自体の形式を変えることで、カオスをコスモスに変えることができ、より良い会議の場を形成することができる。

 著者は、こういった分化過程の一般理論を目指した。モデル自体は、細胞が分裂するにしたがって、はじめは同じ性質をもっていたのに、その細胞間の化学物質のやりとりを通して異なった性質の細胞へと分化していき、最終的には異なる細胞の集団が形成されるという機構を与えるというもの。しかし、この理論はかなり抽象的で一般的なので、細胞に限らず同じタイプのユニットが相互作用を通して異なったタイプのものとなっていくしかけを与えているとみなすことができる。少し想像をたくましくすると、このような問題は細胞集団だけではなく、アリや人の集団が分化、分業して社会を形成することとも関係してくるように思われる。ここでも、それぞれのタイプが適度な比率で分化して存在し、ある役割を持った個体を取り除くと、別な個体がその役割を演じることが見られる。たとえばプロ野球のチームで、主砲が他チームに移るとかえって若手が成長してきてその役割を十二分に担うことがあるように。

 それでは、内部構造は人より単純な〔おそらく〕アリが集団になると高度な仕事をなしうるのに対して、人の場合は数が多くなると、逆に愚かさを見せてしまうようになるのはなぜだろうか?

 人は集団になり、一定の社会を成立させると、そこになぜか矛盾点を生じさせる。自然の摂理がすべてつながって一つに結ばれている神の業を感じるのとは対照的に、人間は矛盾を見せる。著者は科学者であるゆえに、このような問いに対して科学的な答えがいつの日にか得られるだろうかとつぶやいている。

 互いに役割を分業して「協調」した状態、少数に資源が集中した状態、メンバー間の競合が激しくなり互いに足を引っ張って成長できない状態などをゆっくりと遷移する。社会の遷移課程にもある種のパターンがある。それは、安定と不安定の遷移だ。不安定な時代、戦乱の世に対して、一定の平和で安定した時代がある。しかし、政治の腐敗や、民衆の不満が爆発したり、また外部からの圧力など、また不安定を繰り返す。安定の中にも矛盾があり、またカオスが生まれる。数千年間人の本質は変わっていないという著者の見方がある。

 もし、数千年の昔から人とそのものの内部的な能力に大きな変化がのぞめないのであれば、むしろ、人と人の間の相互作用の変化に希望を見出すべきなのかもしれない。

「人が人を人として」という私たちの会社の言葉と本が、どこかでつながりだすのである。

 

そういった意味ではインターネットの発展は大きな変化をもたらすかもしれないと著者は言う。これは人と人とのつながりの度合いを本質的に変えてしまい、人同士の物理的距離を無意味にできるものであるからだ。そして一般的にどんなモデルの結果でも、互いに影響しあう相手の数が距離と関係なく多対多となってくると、やりとりが距離にしばられて少数に限られていた場合とは大きな違いが現れてくる。Youtube,やFacebookの社会的な影響というものは、著者の言うインターネットの具体的例と取れるであろう。少数であった社会の意見をインターネットの動画、情報、意見、思想、を大多数のものに瞬時に変えることができる。無論、インターネットによってもたらされる相互作用の変化がどのような方向の違いをもたらすか、それが問題なのだが。

 

著者が、他の著名な研究者と提唱している仮説に私は同意した。

まず初期の不安定な動き〔カオス〕を利用して多様な状態が生まれ、その中から、相互作用を通して、繰り返し構造を持つ状態が選ばれて安定化していくという仮説

ライフスタジオが最初から秩序とシステムを持って今日まで来たのではなく、たくさんのカオスを利用して多様な状態が生まれ、その中から相互作用を通して、繰り返し構造を持つ状態が選ばれて安定化していくと私もその仮説に同意するとして、ライフスタジオはコスモスを持ったにも関わらず、また自らカオスを望んで突っ込んでいく傾向があると見る。しかし、その繰り返しの中でたくさんの変化・発展・文化が生まれていくのだ。安定という言葉は人が望む事かもしれないが、もしかすると安定していること自体が不安定だとも言える矛盾を思うと、カオスとコスモスはいつも行ったり来たり。それが人生かと考えたりする。

 

私の仕事ややるべき事も列挙するとたくさんあるカオスだ。しかし、その中にコスモスを作っていくためにはどうしたらいいのだろうかと日々考える。個人の知性と、集団の知性が相互作用を通して、繰り返し構造を持つ状態を選びながら、安定化していければいいのだが、

それでもカオスが続くのだ。

 

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