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越谷店
日本一のクレーマー地帯で働く日本一の支配人 静岡P29
投稿日:2012/1/24
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日本一のクレーマー地帯で働く日本一の支配人 静岡P29
Center:蒔田高徳
本屋を歩いていたら、この本のカバーが目に止まった。本の裏面を見たときに、「人が人をつくっているのです。」という太字の言葉を見てこの本を買おうと決めた。「人が人を人として」という会社の言葉と重なった。
この本はドキュメンタリーだ。現在も現役で働くホテル支配人である三輪康子さんが、歌舞伎町のホテルで働く中での、けして負けず、人を信じて、戦い続けたエピソードと彼女の中にある信念の書だ。彼女が働き始めた歌舞伎町の某ホテルは当時ヤクザがロビーにたむろし、トイレには覚せい剤の注射器が、いつも落ちていたり、従業員の目の前でも平気でヤクザが一般客にかつあげが横行するような現場だったと言う。従業員はおびえ、命の危険をいつも感じながらホテルは無法地帯のようになっていた。
彼女は自分の信念である正義を曲げず、どんな顧客に対しても、人を信じまっすぐ向かっていく。正義を貫くだけでなく、ホテルグループの中で何度も「売上げ日本一」の成績を残した。しかし、彼女は売上げを上げるにはどうしたらいいのかを考えていたのではなく「スタッフがいかに楽しく安全に働けるか」を第一に考え、売上げは結果としてあとからついてくる、という信念を持ってこのホテルを運営してきた。
怒鳴られたら、やさしさをたった一つでも多く返すこと。
自分がされて嬉しいことをして差し上げよう。嫌なことは、誰にもしないようにしようという、幼稚園の先生に習ったような、とてもシンプルな原則を持って、
怒鳴られても、やさしい気持ちを失わないようにしよう。人をしんじることをやめないようにしよう。言葉にするのは易しいことですが、実行するのは難しい事です。やさしさとは、クレーマーに対してただ従順に言うことを聞くことでもなく、ヤクザの言いなりになることでもない。人の怒鳴り声の奥に隠された、やさしさや人間味を信じ続けようとする彼女の姿は本を読みながら、こっちもハラハラするようなドキュメンタリーだ。
私の中にも、物事に立ち向かう原則を彼女のように存在させなければならない。それは目にけして見えないもので、誰にわかるものではないが、必ず必要だ。
彼女の言葉の中に「おもてなしとは命を張ることだ」とある。普通であれば、おもてなしと命を張ることは結びつきはない。なぜ、彼女はそう断言できるのかというと、究極の命をかけてまでも人を信じて対応するという信念からこの言葉を発しているからだ。
やさしさは何よりも強いものだ。正しいことは貫かなければならない。屈強な身体を持っているのではなく、屈強な信念、心の強さが、彼女に信念の敗北を与えない。ヤクザに日本刀を目の前にしながら「ぶった切るぞ」と脅されても、彼女は「お客様に私は殺せません!!」と後ずさりすることなく、前に出る。ヤクザも「あんた、、、すごいな」と心から感心し、彼女に心を開いていく。
私の中に彼女のように強い信念と呼べるものが何かあるだろうか。今「カオスをコスモスに」という言葉を自分に持っているが、それだけでは到底彼女には及ばない。
「常に相手の立場になって物事を考えてね」と彼女はいつもスタッフたちに言うのだが、私もこういった言葉をたくさん聞きながらも、よくそれが出来てはいない。同じサービス業の中にいながらも、信念と行動の違いには本当に頭が下がる。
彼女は一生懸命、人としての正義を貫きながら、「私は知らないうちに支えられていたのだ」ということに気付き始める。一人でヤクザに立ち向かっていたはずが、いつのまにか警察に見守られ、危ないときには助けてもらっていた。自分でも知らないうちに特別保護対象者にも認定されていたそうだ。何か彼女の後ろに強烈なバックがあった訳ではない。そして同じホテルで働いているスタッフたちの並々ならぬ努力によって支えられ、少しずつホテルの雰囲気が変わっていき、スタッフたちの顔にも誇りがあふれてきた。「辞めたい」という言葉を聞かなくなった。「支配人がいるから、この職場が好きだ」と言ってくれるスタッフたち。あなたがいるから、この職場が好きだ。必死の努力をしてきて、周囲からこんな言葉が聞こえてきたら本当に嬉しいだろう。
正しいことをしようという確固たる信念は状況を変える
彼女のホテルでは暴力団組員の宿泊をお断りしている。「この町にいられなくしてやる」と脅されたり、どんなに大きな声で怒鳴られても、彼女は例外を作らない。この人は怒鳴り込んできたから泊める。別の人は泊めない。それではいけない。一度でも例外を作ってしまっては、怒鳴り込んで来たヤクザはすべて泊めなければいけなくなる。状況を自分に明け渡してはいけない。それが本当に大切だと思ったら、信じ続けること。それは言葉では簡単かもしれないが、そんなことができるものではない。少しでもおじけづいたなら、そこを狙われ、ガッとつぶされるという。誰にでも、闘う状況があるはずだ。彼女のように「やさしさ」が人を無敵にする。信念が理不尽な状況から自分を救う一本の強い幹になる。私にもそれができなければいけない。
「クレーム処理」と「クレーム対応」の違い
クレーム対応でも、人間を信じるという気持ちが彼女を支えている。クレーム対応とは、クレームに対応することではなく、まず、全力で人の気持ちを理解すること。つまり人への対応です。と彼女は言う。私も同意する。それは心の中にあったとしても、それが実際に自分の行動や言葉に本心として表せれるのか。私はまだまだ未熟だ。基本的にお金で解決することは、基本的に問題の解決でなく、問題の放棄だと彼女が言うように、お金を払うことで状況を何も変えない場合もある。人にアプローチしなければならない。まず、お客様の言葉に対してしっかりと耳を傾ける。お客様の気持ちに寄り添う。そして怒りの原因をすべて出し切ってもらう。それがクレーム対応だと言います。自分が妥協してしまったことで一度の例外を作ってしまえば、それが原則となってしまうこともある。根気強く、粘り強く、お客様の気持ちに寄り添う。それがクレーム対応の基本だという。一見、一人一人に膨大な時間がかかり、とても効率が悪いように見えても、たった一つのクレームに対してとことん向き合うことが、次のクレームをなくし、他の人のクレームもなくすと彼女は信じ、お客様の怒りの原因を、私達が真摯に受け止めれば、ホテルにとってクレームが財産ともなる。
私の現場でも、クレーム=お客様からの正当なお申し出 であるケースがとても多い。その一つ一つの言葉や、お気持ちはとても大切にしなければならない。そして、それは彼女が言うように、そこから自分達の財産としなければならない。
何にも代えがたい勲章は、部下からの揺ぎ無い信頼
労働基準監督署の職員が突然訪問し、彼女を心配して働き過ぎていると言ったことがあった。彼女は自分がこの職場が好きで、職場からは早く帰るようにと言われているのに、自分が好きで働いてしまっていると、無理矢理働かされているわけではないと涙声で言った。好きで働いているのに注意されることは残念だったと言うが、役所の見解もよくわかる。
その後、その事を知ったスタッフたちが集まり、労働基準監督署に向かい「責任者を出してください。支配人は悪いことをしていません!私達が好きで働かせていただいているのです!支配人に何かあったらどうしてくれるんですか?」と怒鳴りこんだとのことです。
通常、企業に対して従業員の働きすぎを指摘し、働かされ過ぎている職員は労働基準監督書の査察や判断を喜ぶものではないだろうか。労働基準監督署始まって以来の珍事だったことは間違いないだろう。
あとで役人さんは、彼女に「三輪さん、・・・部下に愛されていますね。三輪さんがいかにスタッフに慕われているのかがよくわかりましたよ」言ったそうです。
その騒動があって以来、残業には充分に気をつけて働いているそうです。「残業過多でも自分から好きで働いているという職場」そんな愛される現場を持てることは本当にすごいことです。彼女はホテルグループの売上げ日本一の成績だけでなく、そのチームワークを評価され、全体の中からMVPとして表彰された。彼女はこう言う。スタッフの気持ちもわからないで、お客様の気持ちが理解できるはずがない、と確信している。本人は意識して覚えようとしているわけではないが、新宿歌舞伎町と、今支配人を代行しているもう一つの支店のスタッフ総勢100名の名前と入社年月日、家族構成はすべて頭に入っているという。彼女の言葉、行動すべてから、同じ職場で働くスタッフは、たった一言で、あたたかい気持ちになれるのだそうだ。
私にもそんなあたたかい心がけが必要だなと思う。出来ることから始めようではないか。私を突き動かす信念と呼べるものはどのくらいのものか?彼女の本を見て、自分は・・・と考えていた。本を読むだけで、作られたドラマよりも、劇的でドキュメンタリーだ。一度そのホテルに行ってみたいなと思うものである。
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