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われ日本海の橋とならん 静岡P28

投稿日:2012/1/5

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われ日本海の橋とならん

内から見た中国、外から見た日本-そして世界

著者:加藤 嘉一

Center:蒔田高徳

 加藤 嘉一。この人物の名前を記憶した。私より2年、年齢は下になる。しかし、彼は私などよりも、はるか先に向かった時の人だ。本を読みながら、本当に感心してしまう。突然のインタビューの一言から、彼は中国でもっとも有名な日本人となる。

英フィナンシャルタイムズ中国語版コラムニスト、北京大学研究員、慶應義塾大学SFC研究所上席書院。1984年静岡県生まれ。2003年高校卒業後単身で北京大学留学。同大学国際関係学院大学院収支課程修了。年間300以上の取材を受け、200本以上のコラムを書く。香港系フェニックスニューメディア[鳳凰網]における自身のブログは2008年3月開設後、3ヶ月で500万、半年で1000万アクセス、現在5500万アクセスを突破、中国版ツイッター「新浪微博」のフォロワー数は約65万人。2010年、中国の発展に貢献した人に贈られる「時代騎士賞」受賞。

彼のプロフィールだけでも、他にも書こうとすればもっと出てくる。加藤嘉一とは何者なのか?と聞かれたら、彼は迷わず「Runnerだ」と答えるという。それは正しい。彼は時代をかけるRunnerだ。そう彼は今も走っている。教育者にして世界的ベストセラー「武士道」の著者であり、国際連盟の事務次長ともなった新渡戸稲造は、アメリカ留学に際して「願わくは、我太平洋の橋とならん」と語った。私も武士道は昨年末に読んだばかりだ。その新渡戸稲造の言葉を借りるように、彼は日本と中国に新しい風を送り届けること。「日本海の橋となり、一人でも多くに橋を渡ってほしい」と願っている。

 

彼は中国全土に「加藤現象」を起こした。彼は英『フィナンシャルタイムズ』中国語版に連載しているコラムに、「第三の眼」というタイトルをつけているが、今中国人がもっとも知りたがっていることこそ、まさしく「第三者から見た中国」なのだ。自分達は世界からどのように見られているのか?世界に冠たる大国として、しかるべき尊敬を勝ち得ているのだろうか?そんな空気が充満していた、時代が『第三の眼』を求めている中、彼のインタビューで発言をし、提言をする。

中国のテレビ番組では、日本のような分厚い台本もなく「加藤さん、今日はよろしく。放送では日中関係の難しい問題には触れるつもりはないから、あなたは反日デモの現場で見たこと、その場を感じたことを率直に話してくれれば大丈夫ですよ」こんな打ち合わせで、「はい、スタート」だそうだ。ほとんどがぶっつけ本番の一発勝負。日中の難しい問題には触れないと事前に言っておきながら、彼がインタビュー中に受けた質問はこれだ。

「加藤さん、あなたは昨日の反日デモを見に行ったそうですね?」

「ええ行きました」

「どうして見にいったんですか?」

「やはり、日本人としてデモの様子は気になりますし、直接自分の目で見ないと彼らの主張もわかりませんから」

「身の危険は感じませんでしたか?」

「感じませんでした。大学にいる中国人の友達はみんなフレンドリーに接してくれています。」

そして、キャスターが投げかけた最後の質問だ。

「加藤さん、このような事態に巻き込まれて、あなたも不快な思いをしたかもしれない。そこで聞きたいのですが、こういったデモを招いた原因は、中国と日本のどちらにあると思いますか?」

彼はその時の心境をこう語る。まるで額に銃口をつきつけられたような気分だった言う。テレビの生放送で中国全土に向けてしゃべっている。ほぼすべての視聴者は、デモ現場に居合わせた日本人留学生としての自身が何を語るかに耳を澄ませている。もちろん自分は日本人で、中国におもねるような日本批判をするわけにはいかない。かといって安易な中国批判をしてしまえば、それこそ翌日から反日の火が中国全土に燃え広がる可能性もある。そうなれば深刻な外交問題に発展しかねないし、自分の身も保証されたものではない。言葉ひとつ間違えるだけで、今後の人生が大きく変わってしまうのだ。わずか一秒の緊迫した時間のあと、彼はこう答える。

「デモが起きるにあたって、日本の国連の常任理事国入りの議論、総理大臣の靖国神社参拝、日米同盟の台湾への影響力強化など複合的な要因が存在しました。それに対し、愛国主義教育の強化によって高揚する中国人民のナショナリズムが呼応し、爆発したかたちです。おそらく、中国人も日本人も今回のデモが外交的な案件であることを理解しているでしょう。そして外交的な案件であるかぎり、どちらか一方に非があるものではありません。双方の国にはそれぞれの考えがあり、歴史的バックグラウンドがあり、国内に特殊な問題を抱えています。ですから、問題を解決するには日中双方が抱える原因を慎重に探りつつ、互いが建設的な議論をしていかなければなりません。ただし、もしも日本の政治家のなかに中国を頭ごなしに見下したり、侮辱するような発言をする人間がいるとすれば、それは同じ日本人として恥ずかしいことだと思います。」彼は中国語でこう答えた。

ほんの一瞬、スタジオに静寂が流れ、その静寂はテレビを見ていた中国全土にも流れたのかもしれない。

翌日から中国メディアからの取材が殺到するようになり、年間300本以上の取材を受け、200本以上のコラムを執筆し、100回以上の講演を行い、毎年2~3冊のペースで書籍を出版。胡錦濤国家主席とも会見し、胡錦濤は彼のブログの読者だ。彼が書く第三の眼を欠かさず見ているのだそうだ。

私達は、加藤氏のようにこんな強烈なプレッシャーのある、国際問題や人の感情に火をつけうる可能性のある質問は受けることはそうはないだろう。しかし、重要な質問はいつもある。そして答えはいつも本質を見て答えられるようにしたい。彼がどのインタビューで答える時も、かれは問題のストライクゾーンを絶対に外さないように意識しているそうだ。発言については、一切手を抜くことなく渾身の剛速球を投げる。しかし、ストライクゾーンは外さない。暴投することもなければ、デッドボールを投げることもしない。自分だけのストライクゾーンを見つけ、いつでもそこに剛速球を投げる制球力を身につけたという。彼が一過性のブームに終わらなかった最大の理由だろう。

彼の設定する「ストライクゾーン」を見てみよう。

彼が中国メディアに登場するとき、大きく4つの観点から自分の発言をコントロールしている。

①     自分は日本人であること。

②     ここは中国であること

③     政府・インテリ層にとって価値のある提言であること

④     大衆に伝わる言葉であること

順番に説明すると、① 中国において自身が発言するとき、それは加藤という個人の意見に留まらず、おのずと「日本人の」意見になってしまう。自身が望むと望むまいと、メディアの前では日本を代表しているのだ。だから、たとえ議論が日中のデリケートな政治問題に及んだ時でも、安易に謝罪したり、彼らと一緒に日本を非難することはない。日本を代表する人間として最低限守るべきライン、日本人としての尊厳や自尊心は常に意識している。もし、彼が中国を持ち上げる発言を繰り返し、日本を口汚く批判していたら、彼らから喜ばれたとしても、尊敬を受けることはないだろう。国際社会において、自身のルーツに誇りを持たない者は軽蔑の対象になってしまう。

 ②中国にあるいくつかのタブーは、外国人だからと言っても避けられない。中国メディアの「コード」を知り抜いている必要があり、中国社会に苦言を呈する時にも、頭ごなしに批判しているようでは受け入れられない。ただでさえ中国の人々はプライドが高い。その上で、中国にとって耳の痛い、しかし有益な、意見をいかにして受け入れてもらうか?

彼が取っている方法は弁証法である。ヘーゲルやマルクス、ソクラテス、アリストテレス、彼らの対話形式はそうではなかったか?実際に彼の中国メディアへの受け答えの仕方は本当に上手だと思う。私達も参考になるものだ。しかし、それらは何千年も前から哲学者達が取ってきた方法だと思うと最近になって哲学を知ろうとする自分は何だか感心してしまう。

③彼はタレントではない。彼は自身の言動が少しでも日中関係や中国の未来に資するものであって欲しいと願っている。それができなければ自身には価値がないとまで言い切る。だから彼はいつも国を動かす党指導部が見ていることを頭において「提言」をしている。特に彼が連載している「英フィナンシャル・タイムズ」のコラムは胡錦濤国家主席が読むことを前提にしている。事実、胡錦濤氏は彼のコラムを欠かさずに読んでいるそうだ。

④「大衆に伝わる言葉であること」複雑でデリケートな話題だからこそ、わかりやすい表現を使わなければならない。適切な比喩やユーモア、テレビ番組であれば、表情やボディランゲージも重要な要素になる。話のレベルを落とすことなく、どれだけたくさんの人に伝えられるか。これを忘れてしまっては、メディアに登場する意味はないと彼は言う。

 

以上の4つの点が交わるポイント、そこが彼が言う「ストライクゾーン」だ。それを常に意識しながら、彼はそのストライクゾーンを外すことなく全力投球の言葉を投げている。

 私達の会議、私達現場での発言の場でも同じ事が言えるだろう。店長会議、デザイン室会議、全体会議、たくさんの発言の場はあるが、そこで発言のストライクゾーンを設定し、そこからそれないように私もストライクゾーンを設定して見よう。

①     自分は本社、日本デザイン室の人間であること

②     ここはライフスタジオであること

③     リーダー、店長、スタッフにとって価値のある提言であること

④     伝わりやすい言葉であること

この4点の重なるところをポイントに全力投球できる精度の高い、投球を私もできるのであれば、私の発言の質も変わるのでないか。

 

 文化が違うこと、国民性が違うこと、そして国の制度が違うこと。本来これは当たり前の話で、優劣を競うべき話ではない。自分達と「違う」からといって、相手が間違っているわけではない。自分達と違っているからこそ相手を知る喜びがあり、手を結ぶ価値があるのだと彼は言う。彼の北京の学生たちに、若者は3つのステップによって成長するという話をするのだそうだ。

第一段階は「自立」すること。たとえ心細くても、自分の足で立つこと。

第二段階は、個としての「自信」を掴むこと。

第三段階は、本当の意味での「自由」を手にする事。

 彼の3段階のメッセージの説明は省くが、去年何度も出会った言葉、そして自分の意識から離れることの無い言葉が「自立」だった。本を読みながら、その言葉はより自身の確信に変わっていく。2012年度を私も著者のように「Runner」だと言えるように、私自身もっと勉強して生きたいと強く思わせてくれた。とても良い本だった。たくさんの人に推薦したい本です。

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