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車輪の下 静岡プロジェクト12

投稿日:2011/11/11

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車輪の下

ヘルマン・ヘッセ

Center:蒔田高徳

 車輪の下はヘルマン・ヘッセの長編小説。1905年に発表されたものだ。周りの人から期待され、その期待から外れてしまった少年の姿を描いている。

 車輪の下と言うタイトルは、少年を押しつぶす社会の仕組みを表現している。100年前の社会、現代の社会、同じように車輪の下にはまっていく幼い心が踏みにじられていくのは心が痛い。私が中学の頃留学していた韓国の教育社会は、現代版車輪の下と言う現場がたくさんある感じだった。皆が何かしらの塾に通い、落ちこぼれは落ちこぼれ。高校は昼と夜のお弁当を持って、学校での自習時間が夜の10時半まで。私は中学生活で留学を終えたが、私が恐らく韓国で高校生活を送っていたら、おそらく車輪の下になっていたのだと思う。もしくは、不良学生かな。

日本はあちらに比べればまだ少しは自由なようだ。暮らしていた寄宿舎では、そこから出て違う進路を行くこと自体が何だか悪いかのような雰囲気があった。私は私の小さな社会から当時逃げ出したような選択をした気がしていたが、そこから飛び出せる事に少しの不安よりは大きな希望を持っていた。親の反対とたくさん戦った記憶がある。

 主人公ハンスは、幼い頃から周囲に天才的だと言われ育つ、周囲の期待に応えるように、自分の生きる習慣は勉強、勉強、勉強となる。本当は釣りが大好きな少年。他の子供たちと同じように元気な少年だったが、彼の心身は物語の中で痩せ細っていく。詰め込む知識や教養、それ自体には価値はない。それをヘッセは文の中に位置付けて、いかにそれを活かして生きていくのかが重要なのであって、それが立身出世の手段として社会の色合いを強くしたとき、それは悲しい結果を人々に、特にいたいけな少年の魂に不幸をもたらす。ハンスの不幸に手を貸したことに、全く無自覚な牧師や校長や父親。彼らと読者である自分達の社会も似ていると感じた時、とてもメッセージ性の強い作品であり、彼自身の青春時代はとても苦しく、またたくさんの出会いがあった青春時代だったのだと思う。彼が友人ハイルナーと友情を交わし、恋をし、退学をしてから町の機械工として生きていこうとした幼い少年の葛藤の人生を見ながら、「人間の価値を決定するもの」そんな曖昧な定規を作者が必死で探し出そうとしながら、

必死に社会の中で生きた物語の結末彼は慣れない酒を飲む・・・そして。

 物語の主人公は救われなかった。そこが社会に対しての強いメッセージを持っている。ハッピーエンドで終わるなら、車輪の下と言うタイトルをつける必要がないだろう。本のあとがきを読めばヘッセの生涯は作家として、けして楽をしてきた訳ではないことがわかる。作家として生きたい情熱を持ちながら、書店で働き本を書き続け、第一次世界大戦を経験し、以前に私が読んだ「デミアン」も出てくる。本を読み終えて、作家の生涯を知り作家が人生の中で感じたメッセージを社会に向けたものが理解でき、自分の中に入ってくる時、小説はまたその枠を超えて、私達に向けた作家からの手紙のようでもある。「デミアン」を読んだ時にこの作家の本はもう読みたくないと思ったが、ヘッセの名前を忘れながらこの本を手にして、またヘッセに出会った。なんとも不思議な因縁だ。この本を読んで、ヘッセの他の作品が読みたくなる。次は「郷愁」か「ヘッセ詩集」を読んでみたい。 

 

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それは、出会う全ての人が生きている証を確認できる場所になること。
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