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市川店
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作った表情か…素の表情か…。

投稿日:2019/4/30

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被写体の表情を引き出したとき、作った表情なのか、素の表情なのか、わからないくらいが一番魅力的である。100%の作り物でも純粋なリアルでもない、だけどその場にたしかあった瞬間的な表情を選択によって抜き取れるのが写真の面白さだ。

 

そう語るのは、私の大好きな写真家である、奥山由之さんだ。

被写体に求める人の“らしさ”の感覚を、奥山さんはしっかりともっている。

例えば被写体に、フリスビーを受けて、投げ返すという動作を繰り返してもらうとする。そのうちに、フリスビーにある程度、集中しなくてはならなくなってくるため、カメラへの意識が少しずつ薄らいでいくのだ。その場合に訪れる、フリスビーを受け取ろうとした瞬間というのはドキュメントであり、その中で、どこか撮られているという意識もあってという、複数の意識が混じった表情にはその人らしいバランスを感じる瞬間があるという。

 

そういった、状況を作り出すのもそうだが、奥山さんにはその瞬間を切り取る能力が優れ過ぎているのだと私は思う。

“らしさ”の感覚は、人それぞれであるし、大きさもさまざまだ。

その時における、時間や空間、人やモノなど、そこの空間に存在する何かが被写体にとって、様々な感情や表情を作り出す。

奥山さんのように、感覚としてそれが自分の中にあることで、スッと被写体に寄り添い、溶け込むものに人間身を感じるのだろう。そんな奥山さんに多くの被写体たちの表情からは、おのずと湧き出てくるものがある。

その、大なり小なりの“らしさ”に、見る私たちは魅力を感じ、その写真の虜になるのだ。

 

今回、この写真を撮りながら、まず彼の“らしさ”を表現するために、時間や空間、小物の用意を行った。

市川店での4階での撮影。

写真に写る右側には、インテリアの一部として座ったり、立ったりとできるスペースがある。

そこに、赤いバスを走らせるよう、声掛けを行った。何度か行ったり来たりと走らせたうえ、彼は、下に広がる広いスペースで、バスを走らせた方が、楽しいのに気づき移動をしようと瞬間である。

もう、彼の中では、バスを走らせることに集中をしており、カメラの存在は彼の中から、薄らいでいっていた瞬間だったのだろう。

しかし、カメラマンとしても、視線が欲しくて、彼の名前を呼び掛けた時、カメラの存在を再び思い起させ、様々な感情が混じり合い、合わさり合い、彼らしい表情となったに違いない。

 

奥山さんが言う、「複数の意識が混じった表情にはその人らしいバランスを感じる」という、意味が分かった瞬間であった。

光が舞う、この空間では、奥行きがあまりないため、背景としてのインテリアと彼とが平面的な空間として写りやすい。

カメラを構えている場所は衣装室であり、衣装室に入る扉に掛かるカーテンを前ボケに使用し、写真としての立体的な空間へと演出を行ったのだ。

 

作った表情か…素の表情か…魅力的な瞬間を求めながら、かつ私たちはその空間を常に提供し続けなければならない。

そこに、写真の面白さ、深さを感じながら...。

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