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市川店
ほーーーん‼︎よんでみよぉぉおぉーおー‼︎⑰
投稿日:2019/1/30
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その時までサヨナラ
感想文を書きながら、思いましたが、目標冊数を決め読んだ本の中で、山田悠介さんの作品が多くてびっくりしました。
今回も、その山田さんの作品です。
山田悠介の作品と言えば現実ではありえないゲームに主人公たちが巻き込まれていくという、少し怖い作品が多いのですが、今回も同じく期待を膨らませながら、読み進めていったら…、全然違っていて結果、とても心温まる作品に、驚きもありました。
簡単に本の内容を。ネタバレになるかもしれません。
物語は夫婦仲が冷めきった男女とその4歳の子供の家庭が舞台になっています。男は仕事人間で家庭をかえりみず、妻は子供を連れて別居状態。そんな中、何故か妻は福島に行く電車の中で東北大震災に遭い、命を落としてしまいます。息子は無事だったので、男と息子は二人の生活をする事になります。
しかし、男は仕事人間で子供の世話などどうしたらいいのか、さっぱり分からないのです。そこに妻の友人だという女性が現れ、男と子供が二人でしっかりと生きていけるように男に家事の仕方を厳しく仕込んでいくのです。
今まで、仕事人間だった男は家事を仕込まれて、子供の為にいろいろしているうちにだんだんと家族への愛情が沸いてきたのです。そして、だいぶ家事も覚え、なんとか子供と二人で暮らしていけそうなくらいまで上達した時、妻の友人、と言っていた人物が本当の妻であったことを知るのです。その友人の体を使っていたということです。
この作品は、主人公(男)の目線を通した家族愛が一貫したテーマになっているのではないかと思いました。
同時に、夫婦や親子、兄弟(姉妹)、上司と部下、恋人、友人など、誰もが必ず、直面するであろう人間関係を描いた作品だったので、自分に重ね合わせる場面も多くありました。
そんな中、愛と命とが主題に挙げられたかのような作品に感慨深いものがありました。
男はもともと、家のことや手伝いなど何もしておらず、結果、妻と別居状態であったため、自分のことで精一杯になるし、考え方も自分さえよければいいという、自己中心的な考えに染まっていたと思います。家庭を築くうえで母親としての役割を担っている妻に対しての感謝の思いがないというか、全然わかってないのだなと感じました。
女性がお母さんになっていくうえで日々の育児に家事にわからないながらも、必死にもがいて1人のりっぱな母親になるまでにはそう、簡単なものではないのです。そんな中でも妻は、家族である男(夫)に対してぶつかりながらも、やることはやってきたのだと思います。
しかし、男はその気持ちに寄り添うこともせず、目の前のことでいっぱいで、仕事を理由に家庭という環境から目を背けてきたのではないかと感じました。
一番私自身にとって近しい存在であり、私のことを一番にわかってくれているのは、家族ではないかと思います。(一概には言えませんが。あくまでも、私がそうであるので、家族だと思っています。)
なので、この男も一番近い存在である、妻に甘えての行動として、家庭より自分を中心に仕事人間になっていたのではないのでしょうか。
この本を読みながら、私も同じようなことをしているなという節が、いくつもありました。
実際に私は、家族や近しい人ほど、甘えが出てしまい、我が強くなります。近い存在だからこそ甘えが勝り、相手への気持ちを考えることすらできなくなってしまうのです。自分さえよければいいという、思いが家族へ向けられた時には感謝の思いが薄れてしまいます。
しかし、男も妻が事故で亡くなり、今度は自分が親として子供を育てなくてはならなくなった時、親としての責任を持ち、母親代わりをしていかなければならなくなった時、さまざまな葛藤が生じてきていました。
今まで、数えるくらいしか家事に携わることがなかった、男が環境によってどうしても自分がやらなければならなくなった時、はじめて妻の思いを感じることができ、妻に対して抱き続けてきていた思いがいい方向へと変化していきます。また、行動としても、男は大きく変わっていくのです。自分が変われば、周りが変わると言われる内容を、ほんとにわかりやすい形で表現されているなと感じました。
最後には、本当の意味で、妻の今まで抱いてきた感情や思いに気づき、自分自身が気づかされたことによって、お互いの気持ちを分かり合うことができ、再度、夫婦という愛の形を見つけることができた作品であったのではないかと思います。
相手を変えることはできませんが、自分が変わることによって、今まで感じてきたことがないような思いにさせられることはあると思いますが、そこにおいても、何を自分の中で基準としても持ち続けているかによって、自分自身の変化の度合いは変わってくると思います。
この作品では、妻が亡くなってしまうという、もう取り返しがつかない状況からのスタートなので、極端ではありますが、そこまでの状況にならないと人が変化するということが、とても簡単なことではないのだとも感じました。
愛がなかった男が、愛に気づき、愛を感じ、愛を育んだことで、男の人生の中でもっとも重要な内容に気づいたことは、とても幸せなことだと思います。その幸せも、男一人のものではなく、周囲に広がっていたものだと感じた内容もあり、この作品の伝えたかった内容のひとつではないかと思うのです。
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