フォトジェニック


Photogenic
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2015年2月のフォトジェニック

投稿日:2015/3/27

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photographer : Okamura
coordinater : Koide

dressing / hair make:Migita

Photo in URAYASU


人に深く入る撮影とは、どういったことでしょうか。

私たちは日々知らない人を撮ります。
毎年来てくれる方や、指名をしてくれる方や、ファミリー顧客からの紹介等々・・・。厳密にいうと全く知らないわけではないですが、ここでの「知らない」は、その被写体の美しさを「知らない」ということです。
私たちは恋心を抱くような相手や、心が近くに居る人間のことは知っています。その人の美しい角度を知っています。美しい部位も知っています。どうしたらそれが美しく見えるのかも、知っています。それは何故でしょうか。それは、その人に深く入っているからです。

それでは、私たちが初対面の名前と性別と年齢ほどの情報しか得ていない相手を「知る」にはどうしたらいいのでしょうか。その人に深く入るには・・・。

「人に深く入る撮影」とは、よくライフスタジオで言われている言葉です。聞き流してしまえば、それは単なるただの綺麗な言葉なのでしょう。でもせっかくの綺麗な言葉を紐解いて見る機会を持たなければなりません。カメラマンとして、人として。
良い機会に恵まれ、私はこのことに集中して考え出してから、色んなカメラマンの撮影をそこに注目して見学するようになりました。

あるカメラマンは、人一倍良く被写体と、またその家族と話していました。自分の娘も同じ月齢くらいだとか、乗ってきた車の話だとか、その子のする一挙一動全てに声をかけ、声のトーンを家族と合わせ、ゆっくりと丁寧に。その撮影は、私が傍から見ていても被写体が徐々に心を開いていく様子が分かりました。被写体だけでなく、そのご家族もでした。

またあるカメラマンは、自分がエンターテイナーになり、笑いを持ってしていきなり家族の心を掴み、親から笑わせその親のリラックスしている姿をみて子どもが笑っていました。

また違うカメラマンは、忍びの如く潜み遠くから望遠でその子の様子を撮影していました。でもそれは決して人に深く入っていないわけではなく、そのカメラマンの方法でその子ならではの美しさを鋭敏に探しているようでした。

このように、「人に深く入る撮影」に絶対のマニュアルはなく、自ら条件を作り出すことがとても重要なようでした。そしてそのように撮影を編み出して進んでいくことが、私たちが切り取り顧客に提示しなければならない“美”を見つけるためのプロセスなのでしょう。


では私はどのようにして、被写体に深く入ってゆくべきなのでしょうか。
正直、私の中にそのマニュアルはありません。それは被写体によって変動的なのが常だからです。ですが、被写体が赤ちゃんであろうが、成人であろうが、男であろうが女であろうが・・・核にある根本の想いは同じだと考えます。それは「その人の美しい姿を残したい」「あなたはこんなにも美しいんだ」ということを確かな説得力を持って伝えたい。ということです。ここでの説得力、これは写真を意味します。
ですが、どうやら写真だけでなく撮影中に既に伝わっていることがあると、以前被写体から言われたことがあります。その方からは「(私に)撮影されていると、見守られているような愛されているような気分になる。きっと美しく撮ってくれているんだと実感する。」という言葉をいただきました。

なるほど。きっと、私の「深く入る」はそこなのかも知れない。
それが撮影中から被写体に確かに伝わっていくことなのかも知れない。


例えばこの写真。彼女は成人式の撮影で来てくれた二十歳の女性です。
当初着物のみの撮影をお願いされましたが、彼女の魅力をどうしても着物だけで終わらせたくなくて、自ら懇願しカジュアルの写真も撮らせていただきました。
ですので、この写真は着物を脱いだ後に本当に5分程の時間で撮影されたものです。

すべてはイメージの融合から始まりました。
それは私が彼女に抱いた第一印象と、着物の撮影を通して確信した印象と、私の脳裏にあるビジュアルイメージの融合です。
来店時、彼女はセットのされてない無造作な髪と、メイクのしていない肌でした。それが私と彼女の初対面。
成人式の撮影だからきっとロングヘアーの女性が登場するのかと勝手に思っていましたが、来店されたのは髪の短い女性でした。玄関から入る逆光で彼女の少し痛んだ髪は透き通り、八重歯を携えた唇はすこし歪な形をしてすぐに閉じました。そのイメージがすごく強烈にそして至極魅力的に私の脳裏を刺激しました。
そこに彼女の自作のネイルのテイスト、雑誌は『VOGUE』を読んでいるという話から得た彼女の目指すべき美への印象、そして着物の撮影中に見せた色んな瞬間をプラスして。
徐々に彼女の「美しさ」を知っていくことが出来たように思います。

着物を脱いでカジュアル服に戻った彼女に、融合したイメージを当てはめていく。
髪を手でかき乱してもらうこと、ハイコンで撮影すること、光を後ろから当てること。
凛と、見上げてもらうこと。八重歯の輪郭をもった唇を閉じてもらうこと。
自身がコンプレックスに思っている部分が、私にとってはとても魅力的だと伝えること。
そして、それを美しく表現すること。
イメージの融合。この作業がとても面白い。

2人きりでの撮影中。
「あなたの美しい姿を残したい」「あなたはこんなにも美しい」という私の想いが、伝わったのかもしれないと確信してしまうほどの表情、仕草、笑顔がそこにはありました。
そしてこれが、その中の一枚。
私が写真を撮り続けたい理由が、そこにはありました。

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美しさを表現し、思い出を記録する、楽しい遊びの空間

人生の写真館ライフスタジオという名前に込めた想い。
それは、出会う全ての人が生きている証を確認できる場所になること。
家族の絆とかけがえのない愛の形を実感できる場所として、
人を、人生を写しています。

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