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Comfort

投稿日:2026/6/14

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七五三の撮影では、写真を撮る前に考えることがあります。

どんな光で撮るか。

どんな構図にするか。

どのレンズを選ぶか。

もちろんそれらも大切です。

ただ、それ以上に大切なのは、その子がどんな気持ちでその場所に立っているのかということです。

どれだけ美しい光を作ったとしても、どれだけおしゃれな空間を用意したとしても、緊張したままの表情では本来の魅力はなかなか見えてきません。

だから撮影は、シャッターを切る前から始まっているのだと思います。

今回の撮影で選んだのは、白とゴールドを基調としたインテリアでした。

白は光を柔らかく受け止めてくれる色です。

そこにゴールドの装飾が加わることで、上品な華やかさが生まれる。

七五三らしい特別感はありながらも、主役を引き立てる余白が残されている空間でした。

衣装は鮮やかな赤い着物。

そして被布には、一般的なものではなく、ふわふわとしたチュール素材のものを合わせました。

伝統的な着物に、少しだけ現代的な要素を加える。

その組み合わせがとても印象的で、撮影前から楽しみにしていたコーディネートの一つでした。

赤い着物の持つ存在感と、チュールの軽やかさ。

相反するように見える二つの要素が、不思議と心地よく調和していました。

 

【 Comfort 】

Written by Chiba

 

撮影が始まった時、女の子は少し緊張していました。

それは当然のことだと思います。

初めての場所。

初めて会う大人たち。

いつもとは違う服装。

大人が思っている以上に、子どもたちはたくさんの情報を受け取っています。

だから私は、最初からカメラ目線を求めませんでした。

七五三の撮影では、「こっち見てね」と声をかければカメラ目線の写真は撮れます。

でも、その時に写るのはカメラを見ている姿であって、その子自身とは少し違うことがあります。

私はまず、その場所に慣れてほしいと思いました。

安心してほしいと思いました。

だから最初は視線の先を見てもらう写真を撮りました。

空間を眺める姿。

着物を触る仕草。

少し下を向いた横顔。

カメラを意識しなくても成立する構図を選びながら、少しずつ距離を縮めていきました。

技術的な話をすると、その時間を支えていたのが逆光でした。

今回のライティングは、背景のライトを逆光として使っています。

逆光には輪郭を美しく見せる効果がありますが、それ以上に空気感を作る力があります。

正面から光を当てると、どうしても表情や視線に意識が向きます。

一方で逆光は、その場の雰囲気や温度を写しやすい。

まだ緊張が残る時間には、むしろその方が自然でした。

白い背景に光が回り込み、ゴールドの装飾がわずかに反射する。

そこに赤い着物が浮かび上がる。

さらにチュール素材の被布が光を受けることで、柔らかな質感が生まれる。

光が強く見えるのではなく、空気が柔らかく見える。

今回の写真で目指していたのは、そんな表現でした。

そして撮影中、改めて感じたことがあります。

子どもの緊張を解いてくれたのは、私ではありませんでした。

コーディネーターでもありませんでした。

お母さんでした。

お母さんが話しかける。

お母さんが笑う。

お母さんが頷く。

それだけで表情が変わる。

少し前まで硬かった表情が、自然と柔らかくなっていく。

その変化をファインダー越しに見ながら、やはりお母さんという存在は特別なのだと思いました。

私たちは撮影のプロです。

光を作ることもできます。

表情を引き出すための工夫も知っています。

でも、お母さんが持っている安心感だけは作ることができません。

一緒に過ごしてきた時間。

たくさん抱っこしてきた記憶。

泣いた時に寄り添ってきた日々。

そうした積み重ねがあるからこそ、一言の持つ力が違うのだと思います。

撮影が進むにつれて、女の子の表情は少しずつ変わっていきました。

周りを見る余裕が生まれる。

笑顔が増える。

仕草が自然になる。

そして、そのタイミングで初めてカメラ目線を狙いました。

最初から求めなかったからこそ、その視線には無理がありませんでした。

見ているのではなく、見てくれている。

そんな感覚でした。

写真は技術だけでは完成しません。

光だけでもありません。

衣装だけでもありません。

その人が安心できる環境があって初めて、本当の表情が現れるのだと思います。

今回の写真を振り返ると、印象に残るのは白とゴールドの空間でも、チュール被布の可愛らしさでもありません。

もちろんそれらも大切な要素です。

でも一番心に残っているのは、お母さんの言葉を聞いた瞬間に見せてくれた柔らかな表情です。

きっとその安心感こそが、この日の写真を特別なものにしてくれたのだと思います。

心地よい光がありました。

心地よい空間がありました。

そして何より、心地よい安心感がありました。

そのすべてが重なったからこそ生まれた一枚だったのだと思います。

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