店舗フォトジェニック集Photogenic

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2020/11/20

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Photo&Write by Reiri Kuroki

Coordi by Hanaka Fujimura

 

@Shinyokohama

 

 

『人生の写真館』というこの場所について、かつて私が若かった頃よりもいろんなことを思うようになりました。

付き合いの長い越谷店のManamiちゃんからは「懐古厨だ」と揶揄されたりもしますが、案外それも悪くないかもなあ、なんて、年齢を重ねたが故に振り返ることのできる経験だとか思い出だとか、たくさんの写真なんかを見返しながら思ってしまう今日この頃です。

※ちなみに『懐古厨』の意味を調べると『昔を懐かしみ現在を否定する人のこと』とあるので、その点だけは気を付けたいと思います。

 

自分が若い頃には、今、目の前のことに一生懸命すぎて、必死すぎて、『人生』なんて長いスパンのことはあんまり考えられていなかったのかも知れません。

振り返ることのできる経験や思い出が増えていくにつれて、今の自分に繋がるきっかけだとか、何かの始まりだったこととか、当時気づいていなかったけどあの時が最後だったこととか、もう二度と戻ることはないからこその多少の後悔だとか……そういうものが色々と織り重なって今に至っていることを、実感として知っていくことになりました。

私が入社した頃に出会った赤ちゃんたちは、いよいよハーフ成人式の年齢だったり中学生になろうとしていたりします。そんな姿を見ながら懐かしく思い起こすのは、それこそ出会ったばかりの頃の彼らのこと。赤ちゃんの頃には想像もつかなかった七五三や小中学生になった姿も、実際にその姿を目の前にしてみれば、赤ちゃんの時のあの顔から成長してきた過程をその面影に見ることができます。10年近い年月が『ひと』にもたらす、不可逆的な変化と成長を見守らせてもらえている、そんなご縁を繋げてこれたこともまた、幸運でした。

彼らを見ながら、もう赤ちゃんに戻ることはないんだよなあ、と、しみじみと思うばかりです。だからこそ、10年前の写真が本当に大切に思えます。まあ、自分が撮影した昔の写真を今見れば、技術的には荒削りだったりする部分もあるかも知れませんが、それでもやっぱり『写真』が残っていること、そのものが嬉しくなってしまうのです。

それは私が自分で撮った写真のみならず、パパさんママさんに「赤ちゃんだった時、この子こんなにほっぺまん丸だったんですよ〜〜!」なんて言いながら見せてもらう携帯の中の写真も然りです。昔の携帯のカメラで撮ったような粗い画質の写真でも、赤ちゃんだった頃の写真は子どもが大きくなればなるほどに、消せなくなってしまうもの。そんな気持ちも、なんとなくわかってしまう。

今、この時、この瞬間が、もう戻ってくることがないものだってことを知ったから、私はいつも、自分のカメラの前にある『いま』を愛おしく惜しみながら、シャッターを切ります。

 

 

この写真は、ママさんからのリクエストでした。

お兄ちゃんが赤ちゃんだった時に手の写真を撮ったので、と、ママさんは仰いました。そんなお兄ちゃんは今や元気にスタジオ中を走り回れるくらいスクスク育ち、一緒に撮影に入ってくれたはなちゃんを振り回していました。笑

まだ、生後4ヶ月の弟くんの、小さな手。ぷくぷくとした、紅葉みたいな小さな柔らかい手でママさんの指を握ってもらい、パパさんの手を重ねます。シンプルに対角線を成すように収めて、手の大きさの対比が際立つように。その質感を残しつつも少し被写界深度は浅くして、無粋な克明さを少し控えて、手の、その向こう側の空間まで、その柔らかな空気感を大切に…………。

かつて、彼の兄が赤ちゃんだった時に撮った写真。今となっては、お兄ちゃんの手は指がもっと長くなっていて、更には本人の動きたい盛りの意思によって、きっともうこういう写真は撮れないのです。でも、その時の思い出や記憶を呼び起こすような、今回のママさんからのリクエストの写真。弟である彼が、ちょっとだけパパさんママさんを独占したような、彼と両親とを繋ぐ、写真。

彼の人生はまだまだこれからなので、きっとこの先たくさんの写真を撮るでしょう。その、割と最初の方のこの写真は、数年後にママさんが見返す時にどんな記憶を呼び起こすのでしょう。いつか大きくなった彼が見た時に、覚えてはいない頃のこういう写真は、どんな想いをもたらす写真になれるのでしょう。

 

『いま』は必ず過去になり、人生は未来に向かって進み続けています。その時間の中で、ひとの変化や成長は不可逆的で、この時、この瞬間が、もう戻ってくることがないものだということに気付くのは、どうやら少し時間を重ねてからでした。

だから、『人生の写真館』というこの場所では、カメラの前のその瞬間を、空間を、大切に写真に残させてもらいたいと思っています。

ここから始まる、そのひとの人生に寄り添う記憶の記録として。

 

いつだって、カメラの前のその時その瞬間の『いま』から写真は始まり、

それは、いつかの未来の為の『いま』の記憶になっていきます。

 

 

 

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